いまや「SF小説」というジャンルの小説はたくさん存在します。言い換えると「空想科学小説」で、科学的な考え方を土台に「現実にはありえないこと」をテーマにして進むお話のことです。
『タイムマシン』の作者である、H・G・ウェルズや『海底二万里』の作者ジュール・ヴェルヌはこの「SF小説」の創始者と言われています。特にウェルズの『タイムマシン』は、その後多くの作品に影響を与えました。もちろん未来や過去へ行けたら……と想像した人はもっと前からいたかもしれませんが、それを小説にしたウェルズはすごいですね。
さて、作中では「タイムトラベラー(時間旅行者)」と呼ばれる男が、研究の末に作り出したタイムマシンを使って実際に未来へ時間旅行をします。心理学者や市長など、家に集めた男たちにタイムトラベラーは時間旅行が成功したことを証明しようとします。
『タイムマシン』の面白いところは、タイムトラベラーが過去ではなく未来へ旅行した、という点につきます。過去は(相当前のことでない限り)歴史が伝わっていて、何があったのかは現在でもおおよそ知ることができます。しかし、未来がどうなっているかは誰にもわかりません。
タイムトラベラーは、信じられないことに約80万年後の世界へ行くことに成功します。未来で彼は驚愕し、死を覚悟するほどの大変な目に遭い、「未来は現在よりもっと繁栄して、もっと発展しているに違いない」という期待を壊されてしまいました。詳しくは本書を読んでみてほしいのですが、この物語では未来に待っているものは残念ながら希望ではなかったのです。彼は80万年後よりさらにもっと未来の世界も見に行くことになりますが、そこで何を思うのでしょうか。
本当にタイムマシンがあればやってみたいことはたくさんあるけど……、過去をやり直すことも、気になる未来を知ることも、必ずしも良いことばかりではないのかもしれませんね。
(販売部 柴原)