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絵本の相談室

保育士によるはじめての絵本えらび 第8回

本は高くて買えない。図書館で借りるだけじゃだめ?

答える人:保育士 安井素子

 わたしが勤務していた児童センターは本の貸し出しもしていた。
 「この子に、どんな本がいいでしょうか?」と、お母さんやお父さんたちからきかれることもあったけれど、借りる本をめぐって、親子でもめる(?)すがたを、しばしば見た。「それはもう読んだからこっちにしようか? ママ、こっちの本が見たいなあ」とお母さん。でも、2歳のいっくんは車の本を抱えて首をふる。「またそれ? 返しにきたのに」と、ちょっとため息をつく。

子どもたちに何度も何度も借りられてきた絵本。

 「こんなに好きなんだから、もう買うしかないね」と、わたしが言うと、「買ってあげたいんだけど、絵本って高いですよね」と言う。ほかのお母さんも、「買ってすぐ飽きたら、ほんと最悪」と言う。たしかに、お母さんたちの気持ちもよくわかる。すごく好きだったはずなのに、あっさり卒業してしまうのも、この時期の子どものすがただ。

絵本が高くないと思う理由

 「でも、大きくなったときに、『この本大好きだったんだよ』って見せてあげるのもいいんじゃない?」と、言いながら、1冊の本をとって後ろのページをめくりながらお母さんたちに見せる。「ほら、この本、初版が1980年だから、もう40年近く前の本になる。この本は買ってからたくさんの子どもたちに借りられているから、もう元はとれたかなって思うんだ」それを見てお母さんたちが、「そういえば、あの本、自分が子どものころに見たことある」「保育園のころに園の先生が読んでくれた本が、ここにたくさんあるんですよね」と、それぞれいろいろな絵本を手にとってなつかしそうにしていた。

寝ながらも、気に入った本は離さない!

 小さい子の絵本は文字も少ないし、すぐに大きくなってしまって見なくなるだろうし、図書館で借りたら十分だと思うかもしれないけれど、それでも、絵本が家にある生活っていいんじゃないかなあと思う。

 子どもが自分で手にとって自分でページをめくる、その子の本。わたしも、子どものころ家にあった絵本のうちの数冊を思い出すとき、そのとき住んでいた家のすりガラスと窓の木枠まで一緒に思い出すことができる。それは、とってもすてきな思い出。

1000円の本を100回読んだら1回10円!

 「ほら、高いと思うかもしれないけど、1000円の本を100回読んだら1回10円。1000円の本が20年家にあったら1年50円。1年しか見ないと思うかもしれないけれど、1年喜んで読んでいたら1か月100円にもならない! そう考えたら安いよ。コーヒー1杯分にもならない!」と、わたしが言ったら、「たしかに、そう考えたら安い。でも、先生、ほんとに絵本好きなんですね」と、お母さんたちが笑いだす。

 いっくんのお母さんは、「そうですね。大好きなんですもんね。買ってあげようかな」と言いながら、いっくんが持っていた本をまた借りて、それからお母さんが読みたい本も一緒に借りて帰っていった。

何世代も読んでいるといえば『からすのパンやさん』

 小さいころ自分が読んでいた本を子どもにも読んであげられるのが、ロングセラーのいいところ。なかでも、『からすのパンやさん』(かこさとし 作)は、初版が1973年9月で、なんと45年前に出た本! 

この本には、オモチちゃん、レモンちゃん、リンゴちゃん、チョコちゃんという色のちがうからすの子どもが4羽でてくる。4羽の子どもたちだけでなく、ほかのからすたちがかぶっているぼうしや、持っているもの、表情のちがいに気づくと、大人も何度も読みたくなる。からすたちの名前もユニークで、名前をきいた子どもたちはいつも笑いだす。

 いわゆる発達障がいと診断されたМくんが、パンがたくさん描かれたページを飽きずにずうっとながめていた。そのことをお母さんに伝え、「先生、読んでみたらすごくおもしろかったので、買うことにしました」と言われたことも。

『からすのパンやさん』を読みながら、ひたすらパンを食べる子。(撮影:安井素子)

 作者のかこさとしさんはあとがきで、「一人ひとりの人物描写」を「人間的なふくらみとこまやかさで」描くことについて書いている。それだけでなく、さらにこの絵本から「子育ての大変なこと」や、「みんなで協力すること」、そんな大事なことをいくつも読みとることができる。作者の思いがつまったこんなすてきな本を、子どもが大好きなのだったら、家に置いておくのもいいんじゃないかなあ。

 「かこさとし おはなしのほん」シリーズは、どの本もかこさんのあとがきを読むのが楽しみ。大人も子どもにもどって楽しむことができる本だと思います!


安井素子(保育士)

愛知県に生まれる。1980年より、公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年近く。1997年から、4年間、椎名桃子のペンネームで、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、園での子どもたちとの日々を、エッセイにつづる。書籍に、名古屋の児童書専門店メルヘンハウスでの連載をまとめた『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)がある。現在、保育雑誌「ピコロ」(学研)で「きょうはどの本よもうかな」、生協・パルシステムのウェブサイトで「保育士さんの絵本ノート」を連載中。保育・幼児教育をめぐる情報を共有するサイト「保育Lab」では、「絵本大好き!」コーナー(https://sites.google.com/site/hoikulab/home/thinkandenjoy/picturebooks)を担当している。保育園長・児童センター館長として、子どもと一緒に遊びながら、お母さんやお父さんの子育て相談も受けてきた。現在は執筆を中心に活動中。

この記事に出てきた本

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今日の1さつ

通院していた助産院でくいつきがよく、月齢の小さいころから見ていました。先日助産院最後の通院の日、たくさんある本棚の絵本からこれを探し出して、やっぱり何度も見ていたみたい。もう赤ちゃんも卒業かな?と思っていたのですが、まだまだこの絵本に魅力を感じている息子に2歳前ですが、買いました。かってよかった…。(1歳 ご家族より)

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