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偕成社文庫100本ノック

第64回(プレイバック中!)

手にえがかれた物語

2019.08.27

『手にえがかれた物語』岡田淳 作・絵

 8月、季夫は小学6年生の夏休み。季夫は同い年のいとこ理子と一緒に、最愛の妻を亡くしたあきらおじさんを励ますため公園を訪れる。公園ではあきらおじさんが絵を描いていた。おじさんを元気付けようと季夫は、昔そうやってあきらおじさんと遊んでもらっていたことを思い出し、季夫の手に季夫を描いてもらう。手に絵を描いて遊ぶ人形劇のようなものだ。あきらおじさんは自分の右手にワニの目、左手にりんごを描き、理子の手にも理子を描き、季夫と理子のそれぞれの手で1羽の鳥になるように鳥の目も描いた。あきらおじさんはその場で、自分がワニの守っていた願いの叶うりんごを盗みにいったところだという物語の設定を立てる。すると、いつのまにか3人は手に描かれていた自分になってしまっていた。大きな鳥にまたがった季夫と理子は手に描かれた不思議な物語の中へ迷い込んでいく。

 手にえがかれた絵を人形劇のようにして進んでいく物語。
 自分の手に絵を描いてできる遊び。例えば、ヒトの場合。人さし指と中指が足となるように絵を描くと、2本の指を動かすことでヒトが歩いているように見える。他にも、影絵を作るような要領で手の型を決めて、目や鼻なんかを描けば動物にだって見える。そうなれば、すぐに何か設定を決めて人形劇のようにして遊びたくなるに違いない。そうやってますます想像力が掻き立てられていくことが面白さかもしれない。きっと誰だって小学生くらいの時には、指を小さい人間の足に見たてて遊んだはず。車や電車の窓から見える電線を走る、電信柱があればジャンプする、みたいなことで時間を潰していたはず。そして知らぬ間に真剣になってしまっていて時間が過ぎていた、なんてことがあった僕は読んでいる間懐かしい気持ちになった。

 手にえがかれた物語に迷い込んだあきらおじさんと季夫と理子の3人は、願いの叶うりんごに一体どんな願いをかけたと思いますか。小学6年生の季夫と理子は相手の気持ちを考えて行動するということの大切さに気づき始めている、そんな気がしました。物語の紹介ということで、核心となる部分やからくりの部分は秘密にしておきます。8月で暑い日が続きますが、ホッと心温まるラストになっています。ぜひ読んでみてください。

(販売部 嶋田)

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