『オズの魔法使い』の魅力は、作者フランク=ボームが「はじめに」にて書いているこの一文に集約される。
「ひたすら今日の子どもたちを楽しませたいとねがって、わたしは『オズの魔法使い』を書きました。」
フランク=ボームは、教訓などを押し付ける古いおとぎ話を「過去の読みもの」とし、今の時代(と言っても書かれたのは1900年!)に必要とされるのは新しいタイプの「ふしぎな物語」だと言う。
そんな思考で書かれたこの『オズの魔法使い』は、一言で言うならば「痛快」。
主人公の少女ドロシーと、それぞれが抱いているコンプレックスの解消を願う仲間たちが繰りなす言わば珍道中物語は、たとえ大事件が起きてもコミカルで楽しい。
すごくサバサバしていて、後味はスッキリ!
それでいて、読み手である私達のイマジネーションは、無限大に広げ放題! ウォーミングでハートフルだけど、全体的にカラッと乾いた空気感と軽快なリズム感に包まれている。
この素晴らしき絶妙なバランス感覚は、フランク=ボームが「今」をしっかり考え、「今までの常識」に挑戦して書かれた作品だからであろう。「今」を生きる私達も、物語の中で押し付けられた教訓としてではなく、自由な発想で自ら教訓を創り出し楽しむことができる。
私達の生きる「今」は忙しく変化しているため、残念ながら「これから」をゆっくりと考える時間が少ない。そのため、「今」や「これから」に不安を感じることが多くなり、どこか重たい空気を感じることがある。そんな「今」だからこそ、是非とも読んでいただきたい。
私は通勤時に電車にて『オズの魔法使い』を読んでいたが、周りの乗客は不思議な顔をして本のタイトルを見ていた。きっと大多数の人は、「大の大人(男)が『オズの魔法使い』を読むなんて」と思ったのであろう。そんな不思議な顔をした大人におススメ!乾いた軽やかなリズム感がきっと、重く淀んだ心の中を軽やかにしてくれるはず。
(販売部 三輪)