6月30日(金)、東京都荻窪の書店Titleにて、「こんな絵本をずっと創りたかったのです。たむらしげる『よるのおと』(偕成社)刊行記念トークイベント」が開催されました!
60年前に抱いた思いが絵本に
自分がこの宇宙に存在する不思議に気づいた少年の日の体験。そのことをもとに、60年近くたってやっと絵本として表現することができたという最新作について、たむらしげるさんがお話をされました。今回の絵本で印象的な、美しい夜の青さを出すために挑戦した技法のこと、これまでに影響を受けた絵本作品についてなど、絵本制作の舞台裏について、担当編集との対談形式でたっぷり語っていただきました。
イベントは、新刊『よるのおと』の朗読からスタート。
朗読を聞きながら絵本をながめていると、美しい青で描かれる夜の世界に引き込まれていきます。静けさの中に聞こえてくる音が心地よく、ずっと聞きいっていたい、そんな時間が流れます。
今回のトークイベントでは、お父さまと新しいお家を建てられた思い出、五円玉の穴をのぞくのが好きだったというエピソードなどなど……たむらさんの幼少時代のお話もたくさん伺うことができました。穏やかな口調で語られるエピソードに、たむらさんの目に映る世界を少しのぞかせていただいたような気持ちでした。(五円玉の穴は、「こんな小さな穴の中に世界が入っている!」ということがとても不思議だったそうです。)
『よるのおと』のあとがきでも語られていますが、たむらさんは幼少時代に感じた不思議や、ハッとした出来事を、ずっと鮮度をたもって心の中にとどめておくことのできる方なのだなぁと感じました。日常の中のできごとを拾いあげる純粋な感受性と、ともすれば時の流れとともに忘れ去ってしまいそうなイメージがたむらさんの場合には頭の中にきちんとおさめられているのですね。
作品を作るモチベーションについて、「読者の方、子どもたちのことももちろんあるけれど、一番は頭の中にあるイメージを自分自身が見てみたい」というお話も印象的でした。
美しいサファイアブルーのひみつ
『よるのおと』は、透明感のある美しいサファイヤブルーが印象的な絵本ですが、通常の印刷では出せないこの色をどんなふうに出しているのか、なんと実際の原画(!)もお持ちいただいてご紹介いただきました。
『よるのおと』は、サファイヤブルー、パープル、イエロー、ブラックの4つの版を作った上で、それを特色インキで刷り重ねて印刷されています。たむらさんは、1つの場面についてモノクロの水彩画を何十枚も納得のいくまで描かれているのです!(4色の特色に加えて、ある1場面では銀色の版も使っているそうですよ。)
ちなみに……6月中旬に刊行されたばかりの『よるのおと』ですが、好評につき、早くも重版が決まりました! まだ手に取られていないみなさま、ぜひ丁寧に作り上げられた『よるのおと』の世界にひたってみてください。
(販売部 岩澤)