3月21日は、世界ダウン症の日です。ほとんどのダウン症がある人たちには“21”番目の染色体が“3”本あることにちなんで、制定されました。
その前日の3月20日、神保町のブックハウスカフェにて、ダウン症のある家族をもつ作家が著した2冊の本『マルコとパパ』(グスティ:作 宇野和美:訳 偕成社)と『弟は僕のヒーロー』(ジャコモ・マッツァリオール:作 関口英子:訳 小学館)の翻訳者お二方によるトークイベントが行われました!
今回のイベントをコーディネートした編集者のほそえさちよさんが司会をつとめ、日本ダウン症協会のホームページ(http://jdss.or.jp/wdsd2018/)を映しながら世界ダウン症の日について説明をしてスタート。最近刊行された障がいのある子に関する本『アイちゃんのいる教室』や『いっぽんのせんとマヌエル』などを紹介しながら、今回の2冊『マルコとパパ』と『弟は僕のヒーロー』は第三者ではなく、当事者の近くにいる家族が描いた本として特徴があると話しました。
『マルコとパパ』は、アルゼンチン出身のイラストレーターがダウン症のある息子との毎日をつづった本。描きためた数十冊ものノートブックが元になっています。翻訳者の宇野和美さんは、IBBY(国際児童図書評議会)のメキシコ大会でグスティが参加したパネルセッションで本書を知り、翻訳したいと思ったそうです。グスティとマルコの暮らしが垣間見える本のトレーラー(https://youtu.be/mnrNj9gnYeU)も交え、この本ができるまでを語りました。
一方、『弟は僕のヒーロー』は、兄の視点から、ダウン症のある弟との関係を描いた作品。数年前の世界ダウン症の日前日に、弟を主人公にしたショートムービー「ザ・シンプル・インタビュー」(https://www.youtube.com/watch?v=SwpkiAU4AtE)を10代だった作者マッツァリオールがYoutubeに投稿し、それが大きな反響を呼び、本の刊行につながりました。翻訳者の関口英子さんは、いつもアンテナを張り巡らせて新しい本を探しているそうで、この本もアンテナがキャッチして、刊行に至ったそうです。
後半には、それぞれの本の著者が暮らすスペインとイタリアでの、インクルーシブ教育について話がありました。インクルーシブとは「包括的な」という意味で、障がいのある子もない子も、共におなじ場で学ぶことを目指します。
イタリアでは70年代を転機に先進的な取り組みがなされていて、障がいのある子どもたちには支援員の補助がつくことが定められ、現在は通常学級で教育を受けることがほとんどなのだそう。関口さんいわく、イタリアではまず最初に高い理念を掲げ、現場には当然混乱もあるが、だんだん理想の方へ進んで行くという考え方をするとのこと。みんなの目標がはっきりしているのですね。
スペインは、1994年に世界の国々と機関があつまり、インクルーシブ教育を促進するために取り組んでいくことを発表したサラマンカ声明が採択されたことが有名なのだそう。『マルコとパパ』の中に出てくる幼稚園の校歌からも、「どんな子も教育の中心である」、という理念が感じられます。
日本だけでなく、世界のダウン症の子どもたち、障がいのある子どもたちがどんな暮らしをしているのかを知り、共に生きることを考えるきっかけになる2冊、ぜひ見てみてくださいね。
(編集部 佐川)