シュレミールは、白ねこです。そんなに、わかくありません。港町の酒場で、船乗りにイワシをもらったり、たまにはカニをもらったりして、気楽に暮らしています。でも、近ごろ町は、すこし変わりました。戦争がはじまったのです。
そんなある日、シュレミールは、桟橋で半分しずんだクジラのような船を見つけます。好奇心からその船にとびうつってみると、船は沖にむかって進みはじめてしまいます。しかも、どんどんしずみます。あやうしシュレミール!
間一髪、なぞの声にみちびかれて、シュレミールは船のなかに逃げこみますが、なかには、だれもいません。じつは、声の正体は、船自体。
シュレミールが乗りこんだのは海軍攻撃型小型潜水艦U-5114アルムフロッサー、通称アルムでした。電子頭脳を搭載し、動物のことばをしゃべり、自分でものを考える最新鋭の潜水艦です。
アルムは、戦闘中のできごとによって「ものを思う」ようになり、ある目的のために海軍から逃げだしたのです。
こうして、シュレミールはアルムとともに、戦争の原因となった島へむかうことになります。
シュレミールとアルムの軽妙なやりとり、移動用のカメ型、掃除用のカタツムリ型などふしぎなロボット、アルムを追いかける海軍司令部をはじめとする、戦争をする人間のおろかしさ、こっけいさなど、読みどころがたくさんある作品ですが、わたしがいちばんすきなのは、シュレミールがアルムをたしなめるシーンだったりします。
自分を犠牲にして戦争を終わらせようとするアルムにたいし、シュレミールはこんなふうに話します。
「〜生きのころうと思っていれば、生きのこれるかもしれないじゃないか。(中略)それをはじめっから死ぬ気でいたんじゃ、チャンスがあっても生きのこれない。おれは戦争のことはよくわからない。でも、こいつは戦争じゃなくたって同じことだ。平和なときでもいっしょだぜ。」(本文より)
シュレミールのような含蓄のあるおとなになりたいものですね。
ねこと、潜水艦と、海がすきなひとは、ぜひ読んでみてください。
(編集部 佐川)