4月28日は「にわの日」。1年を通して季節がうつろう庭では、さまざまな物語が生まれています。今回ご紹介するのは、そんな庭でおこるできごとを描いた絵本です。絵本を通して、自然の声に耳をすませてみませんか?
1.主人公はじょうろのおじいさん! めぐる命を描く園芸家の絵本『じょうろさん』(おおのやよい 作)
イラストレーターであり、園芸家としても活躍するおおのやよい(大野八生)さんの絵本『じょうろさん』。
庭のあるおうちで、長年はたらいてきたじょうろさんは、もうおじいさん。あるとき、底に穴があいてしまい、庭の片隅に置きっぱなしにされてしまいます。すっかり気落ちしていたじょうろさんでしたが、やがて、その中に、葉っぱが落ち、ミミズがその葉っぱをたべてふんをすると……栄養豊富な土ができました。あるときそこから、芽が出てきて……!
めぐる命の楽しさを描いた、園芸家のおおのさんならではの絵本。庭に咲くさまざまな植物にも注目です。
2.庭にころがったおはぎの赤ちゃんを育てたのは?『おはぎちゃん』(やぎたみこ 作)
ある秋の日、縁側でおじいさんが食べようとしたおはぎが、庭へコロコロコロ……。なんと、それはおはぎの赤ちゃんだったのです! 驚いたのは、庭にすんでいたカナヘビの夫婦。ふたりはさっそくおはぎちゃんを我が子のように育てはじめます。
庭には他にもたくさんの生き物たちがいます。
「ばーばーば」ミミズやミノムシは、いないいないばあをしてあやします。「おやおや、うちのこたちの ちいさいころに そっくりだわねえ」とカエルのおかあさん。「だかせて だかせて」とその子どもたち。
みんなは、おはぎちゃんを大切に育てましたが、やがて秋も終わりに近づき、冬眠の季節がやってきました。冬の間いったい誰が、おはぎちゃんの面倒をみたらいいのかな?
そっとしゃがんで地面の近くをのぞいてみると、もしかしたらこんな楽しいできごとが起こっているかも? ユニークな視点で描かれる、『ほげちゃん』の作者やぎたみこさんの初期作品です。
3. たくさんのいきものたちの庭『ハーニャの庭で』(どいかや 作)
山の途中の小さな家に、ねこのハーニャはすんでいます。おうちの人たちといっしょです。ちいさな家のちいさな庭には、畑や池があり、実のなる木がたくさん生えています。この庭を舞台に、1年をとおして、さまざまな花が咲いたり、実がなったり、生き物たちがおとずれたり、またハーニャの家族が増えていくようすを、どいかやさんのあたたかな絵で描きます。ページを開くごとに、季節がうつろい、その変化をさがして楽しめる絵本。
この山の庭におとずれる生き物たちは、みんな「お客さん」ではなくて、ずっと前からここを住まいとし、通り道としてきた——どいかやさん自身のそんな発見から描かれた作品です。
4.おいしい実のなる草木はいかが?『まだかな まだかな』(伊藤正道 文・絵)
とある星に、ひとりのおじいさんが住んでいました。そのおじいさんはある日、小さな皮の袋に入ったいろんな形の「種」をまきました。毎日きまった時間に水やりをし、丁寧に育てていると……やがて、種は芽をだし、実をつけました。それも、パイナップルやケーキ、プリンなどどれもおいしい実ばかり!
星中のどうぶつたちが集まってきてその実を楽しみ、のこった種をまくと、おいしい実のなる草木がどんどん増えていきました。ところが、ひとつだけ芽がでない種があったのです。「まだかな まだかな」おじいさんが楽しみにまっていると……?
こんな実があったらなあ!と夢がふくらむ、イラストレーター・絵本作家の伊藤正道さんのかくれた名作。
毎日せわしなく過ぎてしまう時間ですが、ふと自然のほうに目をやると、自分の気持ちや世の中の状況となんら関係なく、植物はその季節がくるといつものように花を咲かせ、虫たちは成長し、たくさんのあたらしい命のストーリーが生まれています。
絵本をよんだあと、ちょっと身のまわりの花や生き物たちの声を聞いてみると、あたらしい発見があるかもしれません!