春、池や沼をのぞいてみると、つぶつぶとたくさん集まったカエルの卵を見ることができますね。今回の主人公は、そんな卵から生まれたばかりの101匹のおたまじゃくしたち。彼らの暮らす沼で、命がけの大冒険が繰り広げられます。かこさとしさんの描く、1匹1匹それぞれの生き生きとした表情にも注目です。きっと読み終わったあと、小さな生きものたちがより一層愛おしく感じられるようになるはずです。
101ちゃんが迷子になっちゃった!
たんぽぽの白い綿毛がゆれる、ある日のこと。市べえ沼のかえるのうちに、まるまると太った、かわいいおたまじゃくしが生まれました。なんと、101匹も!
「おかあちゃん。」「おかあさん。」「おかあちゃまー。」「よう、だっこしてよー。」「おなかが へったよー。」「おっぱい くださいよー。」
「まあまあ、あさから なんです。きょうは、とても いい おてんきだから、みんなで えんそくに いきましょう。」
お母さんと101匹のおたまじゃくしたちは、遠足にでかけることにしました。101匹は元気よく、歌を歌ったり、ケンカをしたりしながら、ずんずんと泳いでいきます。
一息ついたところで、お母さんが、みんながきちんとそろっているか点呼をとりました。
「1、2、3、4、……11、12、13、14、……21、22、23、24、……51、52、53、54、……81、82、83、84、……ああ、くたびれた。97、98、99、100! あら、101ちゃんが いないわ! どうしたのかしら?」
どうやら101ちゃんは、道草をしてあそんでいるうちに、みんなとはぐれてしまったようでした。
101ちゃんを探しに、お母さんはひとり、暗い、深い、水藻の林の中へ……。そこは、タガメや、ザリガニの大親分が住んでいる、とっても危険な場所。101ちゃんとお母さんは、無事にみんなのもとへ帰ることができるでしょうか。
描いた当初は1匹多かった?! 制作時のここだけの話
「♬わっしょい わっしょい スクラムだ ♬わっしょい わっしょい スクラムだ」
これは、タガメとザリガニにつかまってしまったお母さんを助けに、101匹みんなでかけつける場面です。実は、かこさんがこの絵をはじめてご自身のお子さんに見せたとき、「102匹いるよ!」と言われ、あわてて1匹消したのだそうです。子どもたちが絵をすみずみまでじっくり見ていることがよくわかるエピソードですね。
みなさんも101匹数えてみてくださいね!
成長したおたまじゃくしたちを描く続編も!
『おたまじゃくしの101ちゃん』刊行から40年後に生まれた続編に、『おたまじゃくしのしょうがっこう』があります。後ろ足が2本生えて、ちょっぴり成長したおたまじゃくしたちは、小学校で勉強にはげんでいます。(ちなみに、前作で101匹いたおたまじゃくしたちは、鳥やザリガニなどに食べられたり、病気になったりして、84匹まで減ってしまったそうです。物語の中でも、自然界で生きる生き物のすがたをきちんと描いているところに、かこさんらしさを感じます)
算数の授業では、みんなのしっぽと足の数をかぞえます。
授業が終わったら、待ちに待ったお弁当の時間です。みんなですいすいと泳いで移動している途中、沼の底から波もたてずにうかびあがった影がありました……。はたしておたまじゃくしの一家は、ピンチを切り抜けることができるのでしょうか?
小さな生きものたちも、こうやって遠足をしたり、学校にかよったりしていると思うと、想像するだけで楽しくなってきますね。もし近所に池や沼があれば、のぞきこんでみてください。もしかしたら、おたまじゃくしの一家が、平和に、ときにどきどきしながらも、楽しく暮らしているかもしれませんよ。