かこさとしさんが自ら望んで企画した、美術の入門絵本『うつくしい絵』。名画の美しさや作者の背景を紹介するこの絵本の、第2弾として企画されたのが、彫刻をテーマにした『すばらしい彫刻』です。
彫刻には、どんな歴史がある? そのすばらしさとは?
彫刻の歴史をかこさとしさんがやさしい言葉で解説するこの絵本には、まずこのようなことが書いてあります。
彫刻は立体的ですから、絵よりもいっそう実物に似せて作ることができます。
けれども実物にそっくりな彫刻ほど、すばらしい彫刻というわけではありません。
また神さまのように、実物をみることができないものもあります。
いったい彫刻家たちは、どのようにしてすばらしい彫刻を作ったのでしょうか?
そして、紀元前2600年ごろのエジプトの王たちにはじまり、紀元前440年ころのギリシアの神殿の彫刻、ミロのビーナスなどの、各地でつくられたビーナスの彫刻……と、世界各国の彫刻の歴史が紹介されていきます。
その1つ1つの彫刻について、かこさんならではの誰にでもわかりやすい言葉で、どのような部分が彫刻として「すばらしい」のかを、具体的に教えてくれます。
たとえば、ロダンの「考える人」。深く物思いに沈む様子が伝わってくるこの彫刻には、実はひみつがあります。
それは、「実際にとるのはむずかしいポーズをしている」こと! よく見ると顔に添えられた右手のひじが、右ひざではなく、左のひざについています。
実際にこのポーズをとってみると、むずかしい上に不自然です。しかしロダンは、人間の深い悩みが伝わるこのポーズを採用しました。あえて実際と異なる表現をしたことで、「考える人」は、よりすばらしい彫刻になったのです。
こうしたかこさんの楽しくやさしい解説で、作品に親近感がわき、自然に彫刻のおもしろさにふれることができます。
実物にそっくりな彫刻が、すばらしい彫刻というわけではない。かこさんからのメッセージとは?
世界のさまざまな「すばらしい彫刻」の紹介のあと、最後にかこさんはこのように書いています。
わたしたちも きているものや ことばや うわべの きれいさではなく、すばらしい彫刻のように かたちや すがたの なかにある たいせつなものを、いつまでも おいもとめてゆきたいと おもいます。