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編集部だより

日常にひそむギリシア神話

2017.11.08

 偕成社から出ている本のなかで、今も手に入るいちばん古い本をご存じでしょうか? 『星と伝説』(野尻抱影・著)です。星にまつわる伝説や神話を世界中からあつめ、1961年に刊行されて以来、愛されて56年となりました。
 この本には、アイヌの人たちや、マウイの人たち、中国大陸などにつたわる伝説も掲載されているのですが、やはり星座といえば……という感じで、ギリシア神話由来のお話がたくさんあります。
 星座といえばギリシア神話、とか言いつつ、ギリシア神話ってよくわからなくないですか? ちょっと(だいぶか)昔だし、名前もむずかしいし、遠い話だと思ってません? 
 でも、そんなことはないんです! ギリシアから遠く離れた私たちのまわりにも、ギリシア神話要素は多分にふくまれているのです。
 
まずはこちらをごらんください。
 
新宿の交差点、アトラスの像があるお店が見える
 
 新宿にある、とある交差点。向かいのお店をよくみてください。
大きな時計をかついだ男の人の像が見えます。この人、じつは、ギリシアの神さま、アトラスです。『星と伝説』にも「怪力ヘルクレス」というお話のなかに出てきます。それによると、
 このアトラスは、大むかし、大神ゼウスを相手に戦争をしたため、そのばつとして、永久に天をかつぐことになったのです。
とあり、実際は時計でなく天球をかついでいたようです。それにしてもゼウスの罰って強烈ですね。ちなみに、その後アトラスは天球をかつぐ役をかわってあげる、とヘルクレスに言われて大喜びするのですが、結局だまされてまた天球をかつぎつづけるはめになりました。かわいそうです……。
 
 まだまだ街にはギリシア神話要素があるはず、と日本橋までやってきました。
 
日本橋三越、入り口前。マーキュリー像が見える
 
 これはすばらしい! 日本橋三越の入り口上にいました。この方は、マーキュリー(メルクリウス)という、厳密にいうとローマ神話からきている像のようです。マーキュリーはギリシア神話の「ヘルメース」と同一人物といわれています。ゼウスの息子で、羽のはえた靴をはき、神々の伝令役として活躍した神さまです。商人や旅人の守護神なので、ここにあるのも納得!です。
 
 『星と伝説』のなかでも大活躍。メズーサ(髪の毛がへびの人)をやっつけにいくペルセウスに、じまんの靴を貸す(やばい、その靴だいじなんじゃないの? マジでいいの?)という泣けるエピソードが紹介されています。
エルメスの看板と、地下鉄の入り口

ヘルメースといえば…と思いましたが、こちらは創業者の方の名字から来ているみたいでした。 全然関係ないですが、右側の地下鉄入り口の看板、そうとうかっこよくないですか……。

 このマーキュリー、こんなところにもいました。

メトロ銀座駅改札内にあるマーキュリー像2体

 東京メトロ銀座駅の改札です。あまりに突然いたので、見つけた時に変な声がでました。なんだかシュッとした感じです。昭和26年にいろんな駅に設置され、地下鉄のシンボルとなっていたそうです。笠置季男さんというかたの作品です。銀座駅だけでも4人もいるみたいです(上はそのうちのふたつ)!商人と旅人の神様、ぴったりですね〜。

 ちょっと趣向をかえて、こんなのはどうでしょう?

西新宿にあったオブジェ。7つの石がたちならぶ。

 新宿でみつけました。長沢英俊さんというかたの「プレアデス」という作品です。プレアデスは、ギリシア神話に出てくる7人姉妹。月と狩りの女神アルテーミスのお付きの人びとです。『星と伝説』では、オリオンとのエピソードが紹介されています。7人の姉妹たちを見かけた大男オリオンが、ちょっとからかってやろうと思って姉妹たちを追いかけます(ひどい)。逃げ込んできた7人をアルテーミスがハトに変えてやり、隠すのですが
 大神ゼウスは、これを見ると、はとたちを、いつまでも空におきたいと思って、星にかえてしまいました。
(けっこうひどい…)そうして、彼女らは星になり、プレアデス星団となりました。この星団は、日本ではすばるとよばれています。ちなみにこの姉妹の長女のマイアは、先述のヘルメースのお母さんです(もうこのへんからよくわからなくなってきますね)。
 
 まだまだあります。どんどん紹介します! 中野に行ったときにみつけました。連続であったのでやや興奮しました。左にある羽の生えた馬が有名な「ペガスス」、右の勇敢な男性がアトラスの兄弟「プロメテウス」です。
 
中野駅周辺にいたペガススとプロメテウス
 
 このうち、『星と伝説』に出てくるのはペガススのほうです。
 この天馬は、ギリシアのペルセウスという勇士が、生きたへびの髪の毛をもった女のばけもの、メズーサの首をきりおとしたとき、その血が岩にしみこんで、そこからとびだしたといわれます。
ということで、その後、ベレロフォーンという若者が怪物キメーラを倒しに、この天馬(ペガスス)にのっていきました。ベレロフォーンはぶじにキメーラをやっつけるんですが、若者らしく調子にのってはしゃいだことで、ゼウスの怒りにふれてしまいます。
 おこった大神ゼウスは、1ぴきのあぶをはなちました。このあぶがとんでいって、天馬をさしたので、馬はおどろいてベレロフォーンをふりおとし、そのまま天へかけのぼりました。
 ベレロフォーンは、まっさかさまに大地へおちて、足をおり、目までつぶれてしまいました。
こうして、天馬はペガスス座となったのです。いい話……?
 
 いかがでしたでしょうか。ギリシア神話、意外にひそんでいますよね?? 
 みなさんも『星と伝説』を読んで、日常にひそむギリシア神話さがしにチャレンジしてみてください〜!

もうどんな像を見ても「ギリシア神話?」と思うようになってしまったのですが、このライオンはたぶんちがいます。

(編集部 秋重)

◎文中に出てくるギリシア神話の神々の名称は、『星と伝説』にならいました。

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