題名にもある「におい」という言葉は「匂い」、または「臭い」とでも表記することができます。芳香と悪臭です。ただ、どちらも「におい」です。
普段、生活しているだけでも色々なにおいを感じる機会が多いですよね。例えば町を歩いても、様々なにおいを感じます。飲食店の前を通れば料理の良いにおいで食欲がわいてきますし、車が通れば排気ガスのにおいがして咳き込むこともあるでしょう。香水をつけている人とすれ違えば意識が一瞬持っていかれ、公園に行けば木々や草花のにおいを感じてリフレッシュ、他にも雨上がりのアスファルトのにおい、友達の家のにおい、冬のにおい…私たちは数えられないくらいのにおいをキャッチしては何かを感じています。それに不思議とその時々の場面や状況によって、何らかのにおいが漂っていたとしても、意識する場合としない場合もあります。においがきっかけで以前の記憶を何か思い出すとういこともよくあります。
さて、今回の『ポアンアンのにおい』もにおいが最後に深く関わってくる物語です。
本の表紙の絵を見てもらうと、男の子と女の子が向かい合っています。女の子は大きなシャボン玉の中にいるようで宙に浮いています。男の子はシャボン玉の中の女の子を優しい目で見つめています。この二人が主人公です。男の子は、さかだちや身をかわすのが得意な5年生の浩。女の子も5年生で、だまっていればかわいいけれど、相手の気に障るような話し方をする陽子。
習字の授業終わりに手洗い場で友達とせっけんを使ってホッケーをしていた浩に、強めの口調で注意をした陽子。それがきっかけで喧嘩になり、2人は校舎の裏庭にある池に、手洗い場のせっけんを落としてしまいます。その後先生に騒ぎが見つかり池の中のせっけんを元の場所に戻すまで家に帰ってはいけないと宣告され、2人で嫌々せっけんを探すことに。すると不思議な笑い方をするコオモリが「世界のおわりなのさ。」と登場。世界のおわりなのに笑っているのはどうして? と物語に引き込まれていきます。浩は陽子を救うために大きなカエルが吐き出す、飲み込まれてしまうと外に出ることのできない大きなシャボン玉をかわしつつ、立ち向かっていきます。
物語の最後には、ツンツンしていた陽子の態度もガラッと変わっていてびっくりすると思います。浩も陽子の態度の変わり様に押されてか、2人の関係性も全然違う感じになっているのです。カギとなるのは「ポアンアンのにおい」なのですが、それが一体何の「におい」なのかは読んで確かめてみてください。
(販売部 嶋田)