きっかけは、コスモスの種を結わえつけた赤いふうせんでした。
ブナやカラマツにかこまれた高原のくさはらで、野の花が咲きみだれる春の日に、主人公のふたりは出会います。お母さんを亡くし、画家のパパといっしょに山の家にこしてきた小学校一年生のノンちゃんと、おろろんやぶにひとりくらす、こぎつねのコン。少しさみしさをかかえたふたりは、すぐに仲よくなります。
コンは、うまくばけることができないのが悩みです。でも、ノンちゃんにもらったばけ薬をつかうと……なんとかばけられました!(じつは、スイス製のチョコだったのですけれど。)
ふたりは、ノンちゃんの学校に行ったり、近所の家に赤ちゃんを見に行ったり。クライマックスは、真夜中に森の奥で行われる〈ダケカンバのまつり〉です。(ダケカンバというのはカバノキ科の樹で、シラカバに似ているそうです。)銀河のような野原に、ばけものや動物たちが集まって踊り、一等賞を決めるのです。まつりのきっぷは、白くてまんまるい小さなキノコ。
異界のものたちが出現するおそろしいようなまつりですが、好奇心いっぱいのノンちゃんは黒い布をかぶってこっそりと参加します。まつりに乱入してきたくろおににむかって、堂々といいかえす気丈なノンちゃん。
コンはすっかり感心してしまいました。
やがて、山に冬がやってきました。ある雪の日、ノンちゃんのパパが熱を出して寝こんでしまいます。
ノンちゃんの涙を見たコンは、無我夢中でばけて、大活躍するのでした。
魅力的なタイトルもさることながら、ふたりの楽しそうなかけあい、コンのかわいらしさ、まわりの自然のえがき方などなど、すべてがみごとに調和しあった名作。
少し長い物語を読んでみたいな、と思いはじめたお子さんにおすすめの一冊です。
(編集部 和田)