「宝島」(原題 Treasure Island)というストレートなタイトルの本。この題名をきいただけで、すぐさま海賊との戦い、海の冒険、ボロボロの羊皮紙に描かれた地図、そして箱に入ったざくざくの金貨や宝石が、頭に思い浮かび、胸がわくわくしてきます(このイメージっていつのまにかうえつけられていますよね)。棚で背表紙だけがみえても、インパクト充分の題名。そして、ひとめみたらちょっと手にとらずにはいられない、冒険心をくすぐる、魅力的な表紙。
この手の物語、子どもだけで冒険にでる、というパターンも多いと思いますが、『宝島』の魅力は、なんといっても「乗組員のなかの唯一の子ども」、ジム・ホーキンズ少年が、大人顔まけの知恵と勇気、そして運もめぐって大活躍するところ(その活躍っぷりは、のちに海賊に仲間にならないかともちかけられるほどです)。「われらがジム!」という気持ちで、同じ子どもとして誇らしい気分でよんだのを覚えています。
大人が彼と対等な関係をもっているのもまた良いのです。たとえば、ジムから地図の発見を知らされるやいなや、冒険心にあふれたトレローニさんという地主さんと、リブジーさんという町のお医者さんは、すぐにはりきって船や船長、船員を手配してくれたり(いいノリ!)、ジムを出し抜こうとか、子ども扱いをしたりせずに、「ホーキンズ君」と呼んで、いっぱしの宝さがしのメンバーとして扱ってくれます。子ども的な無鉄砲な部分ももつジムですが、彼の力で物語がぐいぐいと舵をきられる様子は、読んでいて、爽快な気持ちになります。
物語は、最初から最後までスリルとサスペンスにあふれた展開です。最初から、もう本当に旅のはじまりからスリリング。というのも、読者は最初に、宝島にむかうために集められた船員たちのほとんどが、噂をききつけた悪い海賊と知ってしまうからなのです。刃物をもった海賊たちは、表向きはいい顔をしていますが、航海のあいだ、いつ反乱がおこるのかと思うとひやひや!(夜半に、ジムがりんごの樽のなかでやつらの恐ろしい企みを盗みぎいてしまいおびえていると、そのなかの特に悪いやつがりんごをとりに樽に近づき……「ああー!みつかっちゃう!」……というシーンは手に汗握る名場面です)
男の子でも女の子でも楽しめる、冒険物が好きな子ならきっとはまってしまう一冊です!
(販売部 宮沢)