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偕成社文庫100本ノック

第27回(プレイバック中!)

ようこそ、おまけの時間に

2018.06.05

『ようこそ、おまけの時間に』岡田淳 作

 授業中の教室で、勉強とは全く関係無いことをぼーっと考えていると、自分の頭の中で楽しい場面や設定がどんどん出来上がっていく。その世界観をとても気に入り、その中で思い通りに行動しているといつの間にか授業が終わる。という経験を多かれ少なかれ誰もがしているのではないでしょうか。僕自身のことですが、授業中は色々なことを想像して、夢うつつな状態でいることも少なくは無かったように思います。『ようこそ、おまけの時間に』は、ある小学校の12時に見ることができた不思議な夢の話です。

 普通、目をつぶって見る夢というものは、誰にも知られることはなく、夢の中で起こる出来事は勿論、夢を見た本人しか経験することはできないものです。
 しかし、『ようこそ、おまけの時間に』では、近くの工場から聞こえてくる、ある日の12時のサイレンの音をきっかけにして生徒たちみんなにとって魅力的な夢が始まることになります。その日以降、12時のサイレンは、夢を見ることができるようになる生徒が増えるにつれて、更に待ち遠しくなっていきます。読んでいた僕も、どんどん大きく広がっていく夢の世界が楽しみで、登場人物の賢、明子、圭一、優子たちと一緒に、12時が待ち遠しいものへと変わっていきました。

 物語の前半の夢の世界で何故か印象に残っているシーンがあります。現実の世界では冴えない賢の口から「朝日にかがやくきみがすてきだったからさ」という言葉が飛び出し「やったぁ。キザの決定版!」と心の中で叫ぶというものです。夢の中では何を言っても大丈夫と、はしゃいでしまった賢がとても愛らしくて良いシーンだと思います。

 この本は、学校を舞台に繰り広げられるスリリングなファンタジーの世界です。夢の中でいる時はみんなが仲良くなっていき楽しいのですが、夢の中での体験を現実の世界でどう活かしていくのかが課題だと思いました。しかし、読み終えると爽快感に包まれること必至です。ぜひ、読んでみてください!

(販売部 嶋田)

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