「ああ、僕は名探偵じゃないな」と思った1冊。
今回紹介するのは『ABC殺人事件』。この物語の主人公エルキュール=ポワロは代表的な名探偵のひとり。事件の真相に近づくと、ポワロのひらめきが「私の灰色の小さな脳細胞が働き始めた」と表現され、いかにもかっこいいのです。『ABC殺人事件』は子どもの頃に読んだはずですが犯人すらまったく覚えていませんでしたので、新鮮な気持ちで読みなおしてみました。
物語はABCと名乗る犯人の予告状がポワロの元に届くところから始まります。
「エルキュール=ポワロ殿(中略)今月21日、アンドーヴァーに注意することだ。」
予告どおり、Aではじまる町アンドーヴァー(A)で老婦人アリス=アッシャー(A)が殺されてしまいます。そして、死体のそばには「ABC鉄道案内」が。続いてBの殺人を予告する第二の予告状が名探偵ポワロのもとへ届き、ポワロは事件の解明にのりだしていきます。
「さあ、挑戦してみなさい。あなたにこの謎が解けるかな。」と言わんばかりの始まり方ですよね。読み終えて感じましたが、この作品には至るところにヒントが散りばめられています。私には名探偵の素質が少しばかり足りなかったのでしょう。ほんの少しだけね。きれいにだまされて、「ああ、僕は名探偵じゃないな」と思い知らされましたから。
この物語のトリックを解ける人はものの考え方、視点の切り替えがとても柔軟なんだろうなと思います。そして間違いなく名探偵です。是非、皆さんも挑戦してみてください!
(販売部 大西)