アメリカのミシシッピ河畔の小さな村を舞台に繰り広げられる、いたずらが大好きな少年、トム=ソーヤーの冒険集。おばさんのお手伝いをしているとき、学校の授業中、帰り道のみちくさ…あらゆる場面で、トムはするすると悪知恵のアイデアを思いついて、人を困らせずにはいられません。
そんなトムの数々のいたずらのなかでも、やはりわくわくするのが「家出」の話です。
ある日、トムは育ての親であるポリーおばさんに(毎回のことながらも、この日は特別に)ガミガミやられ、ついに、仲間のハックルベリーとジョーとともに、家出をすることを決めます。(この、年頃の男の子2人も、やはり気にくわないことがあったのです)。こどものころ、親に怒られてむしゃくしゃすると、「いつか家出してやる!」とか、「わたしがいなくなったら、いまこんなに怒っていることをきっと後悔するのに!」とか思っていましたけど、でも、実際、家出っていったいどこにいったらいいのか? ということに関しては、見当もつきませんでした。
この三人の少年の場合、家出先はなんと、無人島! 誰かが村の川のほとりにとめてあったいかだ(!)を失敬して、広いミシシッピ川を渡り、その川の真ん中に浮かぶ小さな島で、キャンプをして数日を過ごすのです。
家からちゃっかりハムやらベーコンを持ち出してきている3人、食事も豪華です。火をおこしてそれらをじゅうじゅう焼いたり、魚を釣っては初めての味に舌鼓をうったり。そして何より、この島には3人のほかはだあれもいない。勉強や手伝いをせよという大人がいない、自由なのびのびした時間を過ごすのです。好きなものを食べ、友達と四六時中、遊んで暮らしてればいい。こんな島が家の近くにあるって、なんてうらやましい!
ところが、物語のなかで、やがてトムは、怒る人がいない代わりに、いたずらしてもかまってくれる人もいない、ということに物足りなさを覚えはじめます。どうやらいたずらっ子同士だけでいても張り合いがないようです。
読者としてはもうちょっとこの楽しそうな島の生活を続けてほしいところではありましたが、トムがどんどんホームシックになっていくのを止めることはできず、彼はある晩こっそり島を抜け出して、村の家に様子をうかがいにいってしまいます。すると、なんと村では行方の知れない3人が死んだことになっているのです! 嘆き悲しむポリーおばさんをこっそり窓からのぞいてひどく動揺するトム。ところが、3人の葬式の日取りを耳にすると、やはりそこは悪童のトム、ある盛大ないたずら計画を思いつきます。いったいそれは?!
つづきはどうぞ本をご覧ください!
ちなみにたびたび冒険小説に出てくるアメリカ南部の川、「ミシシッピ川」。この河畔にはずいぶんの数のおもしろい冒険が転がっているようです。いつかはいってみたいものです。
(販売部 宮沢)