物語を読むときに、ついつい自分の境遇と重ねてしまうということ、みなさんにも経験があると思います。三姉妹の真ん中として育った私の場合、そのような作品のひとつが、アメリカのとある町に暮らすマーチ一家の四姉妹を描いた『若草物語』でした。
上から、美しくて心の広い長女メッグ、不器用で男まさりな次女のジョー、可憐で心優しい三女ベス、そして、わがままだけれど気位の高い末っ子エイミー。全体には、この「裕福ではないけれど心のゆたかな四姉妹の、美しい姉妹愛の物語」なのですが、この物語を好きだなあ、と思う部分に、随所にちりばめられている女きょうだいならではのやりとりがあります。
一緒にお話しをつくって空想の遊びをしたりすることや、一致団結したときの仲の良さ(本当にこういうのは姉妹ならではの楽しいこと!)が描かれる一方、姉妹の中での立ち位置へのひがみや悩み、気まぐれのいざこざ、結構ないじわるなど、きれいごとばかりではないこともちゃんと描かれていて、けっこう身につまされる感じなのです。それでいて、彼女たちがいつもどこか自分たちより「ちょっと素敵なところ」を歩いているのが、憧れを抱きやすいというか、四姉妹への親しみを感じるほどに魅かれる部分だなあ、と思います。
たとえば……クリスマスに四姉妹がお母さんからもらう、それぞれに違う色(紅色、みどり色、はと色、青色)の聖書。聖書が何たるかは当時よくしりませんでしたが、質素だけれど尊い言葉が書いてあるらしいその本を、大事に抱きしめる姉妹の姿に、ついうっとりしてしまいます。
あるいは、ジョーがエイミーに大変腹を立て無視をきめこんでいる最中、エイミーがトラブルに合ってしまうシーン。次女ジョーの大変素直な反省ぶりはこうです。「あたしは、エイミーをほったらかしておいたの。(中略)あたしのいやな性質のためよ! あたし、なおそうとしているのよ。そうしてるつもりでも、まえよりいっそうひどくかんしゃくがおきてしまうの。おかあさま、あたしどうしたらいいかしら?」。経験者としては全く同感なのですが、こんなに素直に謝ることができたら、なんていいんでしょう!(ちなみにこのあと、お母さんは優しく、じつに的確なアドバイスをくれます。)などなど、一章ごとに小さな出来事や事件が描かれる本書ではそのひとつひとつに、心惹かれるエッセンスが混ざっています。
ちなみに、この四姉妹の物語にもうひとつスパイスを与えているのが、隣近所に住む大金持ちのぼっちゃん、ローリーの存在です。この子は、ときに紳士的な振る舞いをしたかと思いきや、突然どうしようもなくお子さまだったりするのですが、何かと姉妹に頼られる仲の良い友だちなのです。お話が四人姉妹の仲できれいに完結するのではなく、このローリーによってときに小さな波風がもたらされるのも、またゆかいな一面です。
姉妹のなかで、自分は誰に似ているかなあと思いながら読むのも楽しい一冊ですよ!
(販売部 宮沢)