竹下文子さん×鈴木まもるさんコンビによる、きょうりゅうのとある1日を描くシリーズの4作目は、子育てをしたことがわかっている「マイアサウラ」が主人公。本作について、絵を担当した鈴木まもるさんにお話を伺いました。
きょうりゅう絵本の4作目になりますね。今回は子育てきょうりゅうと呼ばれている「マイアサウラ」が主人公です。『トリケラトプスの なんでもない いちにち』にも登場していますが、マイアサウラを選んだのはなぜでしょうか?
いくつか候補がありました。そのなかでも、マイアサウラは「巣の中で子育てしたのでは?」ということがわかっているので、読者(とくにお母さんたち)が共感できる要素が多いのではということと、ぼくが鳥の巣の研究をやっていて、きょうりゅうの巣にも興味があり、絵も描きたいということから、推しました。

鈴木さんが描かれるきょうりゅうの姿を見ると、形や生態、くらしぶりなど、たくさんの興味が湧いてきます。どのように考えて描かれているのでしょうか。
これまで、鳥の巣を探しに、アフリカやニューギニアなど、かなり昔のままの環境が残されているところに行くことがありました。そういう場所できょうりゅうさんはどんな暮らしをしていたか、想いをはせ、心にとどめたことをもとに、きょうりゅうの世界を描くようにしています。
今回の絵を見て、「たまごは一斉にかえるのでしょうか?」という質問や、色や毛の表現に「こんな風だったんですか?」という質問をされる方もいます。どのような資料を参考にしていますか。
国内外の博物館や書籍から、きょうりゅうの化石でわかっていることや、現存の爬虫類さん、鳥さんたちの繁殖などを参考にしています。
ウミガメさんもそうですが、一度に100個くらい卵を産み、一斉に孵化します。たくさんのほうが襲われる確率が低くなるからだと思います。鳥さんは1日に1個しか卵が産めません。でも、それぞれの種で、一巣卵数(1回の繁殖で産む卵の平均的な数)が決まっていて、その数を産んでから温めるので、みな同時に育てられるのです。
体の色は、地球の大地に住んでいるということから、基本は見つからないようなイエローオーカーのような薄茶色で、しま模様。それが住む環境のちがいで、それぞれちがってくるし、オスは、さらに繁殖期に目だたせていくので、千差万別になっていったのだろうと思います。わからない部分は当然あります。なるべく鳥さんを参考にしています。

竹下さんと鈴木さんは、公私ともにパートナーとして、ご夫婦でこれまでに70冊以上の共著を手がけてきました。とても残念なことに、竹下さんは、2026年3月10日に亡くなられました。『マイアサウラのしんぱいないちにち』は、竹下さんがラフを確認した最後の作品となりましたが、原稿をはじめて受けとったときのことをおぼえていますか?
いつもそうですが、家で一緒に暮らしていて、食事や日常生活をしているときは、現在つくっている作品の具体的なことは話しません。だから、原稿をもらうと、「ヘー、こんなこと考えていたんだ」と驚きます。
マイアサウラについて、化石からわかっていることもありますが、わからないことも多くあります。そこで、うその世界を書くのではなく、生命体として当然持っている部分、「子どもの命を大切にする」というところから、話の方向性が決まったのだと思います。そこから、子育てしている人間のお母さん、お父さんにもつながる世界になったと思っています。
絵本のダミーを作成するにあたり、竹下さんとどのようなことをお話しされましたか?
ダミーを作るとき、フミちゃんの気持ちは文章にでているので、それをいかにうまく伝えるかということを考えます。ダミーを描き、それを見ていただいて、さらに手を入れていくという方法ですが、フミちゃんは場面展開や画面のイメージがある方なので、文を読むと自然に絵が浮かんできます。たいてい、すんなりできちゃいます。


竹下さんの文章は声にだして読むと心地よく、本作でも、短い文の中に、はらはらドキドキする展開があります。竹下さんの文について、鈴木さんが感じていることをお話いただけますか。
フミコさんが持っている言葉の世界は、ただただ脱帽するしかありません。
ありがとうございました。竹下さんと鈴木さんのコンビがつくりだしてきた、くらしや命を描く作品は、これからもずっと子どもたちを魅了し続けると思います。大切に子どもたちのもとへ届けていきます。
ただいま、鈴木まもるさんは、「追悼展 竹下文子 本の世界」[2026年11月21日(土) 〜2026年11月26日(木)]を準備中です。追悼展への思いをうかがいました。
フミコさんが亡くなり、呆然自失となっているときに、知り合いのSNSに「キャンセルがでたので画廊が空いています。だれか借りませんか?」という情報がでていました。「あっ、フミちゃんの追悼展をしよう!」と思い立ち、即、画廊を借りました。それまで追悼展なんて考えたことなかったのですが(あたりまえですね)、フミコさんがつくってきた本の世界を一堂に集めた展示をしたいと思ったのです。
ぼくが絵を描いた本は約70冊くらいありますが、ほかの画家さんと組んだ本は100冊以上です。それだけ多様な世界を持っていたし、美しい言葉の世界をつくってきたんだと思います。
多くの読者の方から「いままで何百回読まされたかわかりません」「字も読めない子が、下の子に全部読んであげるんです」と感想が届きます。フミコさんの言葉は小さなお子さんたちの心にすとんと入っていくからでしょう。
フミコさんは控えめな方だったので、あまり表にでるのを好みませんでした。だから、「こんなにたくさんいろいろな本をつくったんだよ。すごいね、えらかったね」とほめてあげたいのです。
★「偕成社90周年記念 ポッドキャスト番組:偕成社presents あの本、だれがつくったの?」(ニッポン放送)で、鈴木まもるさんのポッドキャスト配信中です! 本作についてもお話されています。
https://podcast.1242.com/anohon/?ep=3




