「夜、寝てくれなくてこまっている」という悩みや子どもの睡眠に関する悩みは、本当によく相談をうけます。
「うちの子は、ごはんも食べずに寝てしまいます」「何時になっても寝てくれません」「寝るときは問題ないのですが、朝起きてくれません」
子どもの睡眠についての悩みはひとりひとりちがいます。
子どもの睡眠によって、おとなの生活リズムまでこわれてしまったり、仕事が思うようにはかどらなかったり、思わず、子どもに怒ってしまったり。
かくいう私も、なかなか寝ない子に「むかし、むかし、ちっとも寝ない子どものことが大好きなおばけがいました。『寝ない子はいないかあ! おばけの世界へ連れていくぞ~』……」と、おばけの話をしておどしたことも! 本気でこわがらせておいて「大丈夫、お母さんが助けてあげるからね」と子どもに言っていたことは、いま思い出すとちょっと笑ってしまいます。
2歳頃は、体力がついてきてますます寝ない!
とくに2歳くらいの子は体力がついてきて、急に寝なくなることがあります。なかなか寝ないだけでなく、「いやだよ~」といやいやをしてきたり、「あっちいけ!」「ばか!」など、どこで覚えてきたのか強い言葉を言ってきたりするので、ますます対応が難しいということも。
たとえば、保育園に通っている子だと、お昼寝の時間が長すぎるということもあります。保育園の先生に相談すると、早めに起こしてもらうなどの対応はしてもらえると思います。
あきらめて、おとなも一緒に布団に入って寝るというのもひとつの方法。あとで起きるつもりが、ぐっすり寝てしまって朝に!というリスクもありますが……。
睡眠は個性があるもの。遅い時間になっても、次の日元気に遊ぶことができればきっと大丈夫。
小さな子が夜10時になっても、11時になっても寝なくてこまっているのに、「生活習慣をつけてあげましょう」「夜は早く寝かせましょう」などと言われると、ますます、寝ないのは親の責任なのでは……と思ってしまうかもしれません。でも、おとなと同じように、よく眠る子もいれば、なかなか寝ない子もいるのは当然のこと。眠りの深さがちがうということもあると思うので、次の日一日元気に遊ぶことができたらきっと大丈夫。
それに、年齢が上がってお昼寝をしなくなったり、日中の運動量が増えたりするとパタッと寝るようになったりします。
夕方の散歩もいいですね。だんだん日が短くなっていく秋の夕暮れに外を散歩するのは気持ちがいい。食べたり、眠ったり、活動するために、たくさん遊ぶのは大事なこと。わたしの家も、1歳から子どもが保育所にお世話になっていたので、家に帰ってから子どもにごはんを食べさせて、お風呂に入れて……という、寝るまでのあわただしい時間を思い出すと、よくやっていたなあと思います。でも永遠に続くわけではないので安心してください。あっというまにじぶんで寝るようになってしまいます。
夜や月、星、「おやすみ」をテーマにした絵本いろいろ。
子どもがなかなか寝ない……それならあきらめて、せっかくなので窓を開けて心地よい風にあたりながら、絵本でも読んでみませんか?
『おやすみ、ぼく 新版』(アンドリュー・ダッド・文、エマ・クエイ・絵、落合恵子・訳、クレヨンハウス)
オランウータンの子どもが「おやすみ、ぼくの あしさん」「おやすみ、ぼくの ひざさん」とじぶんの体にやさしく語りかける。読んでいる方も、子どもの足やひざ、もも、胸をなでながら、静かに読む。最後は「おやすみ、おかあさん」。優しさがあふれた絵は、何度見てもいいなあと思います。眠っている子どもは、オランウータンも人間もかわいい。
『ノンタンおやすみなさい』(キヨノサチコ・作 絵、偕成社)
ちっとも眠たくないノンタンが、うさぎさんやくまさんのうちに遊びに行く。でも、もうみんな寝る時間。起きていたのはふくろうくんで、一緒におにごっこをすることに。でも暗いので、大きな石にぶつかったり、みずたまりにはまったり。やっぱり夜は寝たほうがいいってことになる。ふくろくんとじゃんけんする場面も子どもたちは好きです。(ノンタン公式サイトはこちら!)
『パパ、お月さまとって!』(エリック・カール・作、もりひさし・訳、偕成社)
子どもたちにとって、お月さまはとても不思議な存在。モニカは「パパ、お月さま とって!」とお願いする。パパは、はしごをかけてお月さまをとりにでかけます。子どもの思いをきいて、それをかなえようと、どんどんはしごを登っていくパパ。この姿は子どもたちに安心感をあたえる場面かもしれないと思います。エリックカールが描く夜の世界が、子どもたちを眠りの世界へ導いてくれるかも!
『ゆりかごのうた』(北原白秋・詩、高見八重子・絵、ひさかたチャイルド)
「ゆりかごのうた」を、子どもたちが眠るときに何度も歌ってきたような気がする。びわの木かげでゆれるゆりかごの中で赤ちゃんが眠っている絵はなんとも優しい。北原白秋のこの詩は100年前に発表された詩。情景を思い浮かべることのできるこの詩は、いまでも色あせることがない。次の世代の子どもたちに歌いつがれるといいなあと思う。こもりうたを歌ってもらって眠る子は幸せだなあと思います。
『おばけのこもりうた』(せな けいこ・作、童心社)
『ねないこだれだ』で知られているせなけいこさんの絵本。楽譜がついているわけではないけれど、じぶんで好きなように節をつけて歌う。おばけはこわいけれど、ちょっと見たいという子どもたちにとっては、何度でも読んで、歌ってほしい絵本。読み終わって「おやすみ」と言ったら「もう いっかい!」と元気に言われてしまうかもしれません。おばあちゃんが歌ってくれているというのもいいなあと思います。
『あおいよるのゆめ』(ガブリエーレ・クリーマ・作 絵、さとうななこ・訳、ワールドライブラリー)
「いっさい(1歳)!」と言わんばかりに小さな指をたてることができるようになった子も、絵が変わる不思議をじぶんで楽しめる。表紙にもしかけがあって、動かすと星と月に色があらわれる。黒猫が屋根の上にあらわれるのも子どもたちは見逃さない。しっかりした作りになっているので、小さな子でも破ってしまう心配はない。最後のページでは子どもが目をとじ、電気が消える。「おやすみなさい」と言いたくなる1冊です。
『さわってごらん!よるの星』(クリスティ・マシソン・作、大友 剛・訳、ひさかたチャイルド)
読み手である子どもたちが参加しながら、ページをめくっていく本。さわったり、息を吹きかけたり。ほんのり薄暗い夜のはじまりから、夜がふけていく感じが見事に描かれている。絵の中にあらわれる動物やホタル。ページをめくると絵が変わる当たりまえのことも、じぶんでさわったから変化したように思えるから不思議。子どもと一緒にこの本を読む、眠る前の時間が楽しい。読むとだんだん眠くなってくるはずです!
安井素子(保育士)
愛知県に生まれる。1980年より公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年以上。1997年から4年間、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、子どもたちとの日々をつづる。保育園長・児童センター館長を経て、現在は中部大学で非常勤講師として保育と絵本についての授業を担当。保育者向け講演会の講師や保育アドバイザーとしても活動している。書籍に『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)、『0.1.2歳児 毎日できるふだんあそび100ーあそびに夢中になる子どもと出会おう』(共著、学研プラス)がある。月刊誌「あそびと環境0・1・2歳」(学研)、ウェブサイト「保育士さんの絵本ノート」(パルシステム)、季刊誌「音のゆうびん」(カワイ音楽教室)で連載中。