icon_twitter_01 icon_facebook_01 icon_youtube_01 icon_hatena_01 icon_line_01 icon_pocket_01 icon_arrow_01_r

今週のおすすめ

必要だったのは、誰かからのやさしい言葉『りゅうのめのなみだ』

何かをきっかけに周囲に怒りを抱き、毛を逆立てていたとき、誰かのただただやさしい言葉で、複雑に絡んだ気持ちがほどけた経験はありませんか。『りゅうのめのなみだ』(浜田広介 文/いわさきちひろ 絵)は「おそろしいもの」として人々から敬遠されていた竜と、竜に唯一心を寄せた子どもとの出会いを描いた、浜田広介童話の名作です。

竜を怖がらない、ふしぎな子ども

 お話の舞台は、とある南の国。その国では昔から、山のどこかに大きな竜が隠れている、と言い伝えられてきました。「こわい りゅう」「おそろしい りゅう」。子どもが悪いことをすると、大人は「いたずらっ子や わるい 子を、りゅうは ねらって いるんだぞ」とおどしていました。

 けれども、あるとき、その竜をまったく怖がらないどころか、すすんで竜の話を聞きたがる「ふしぎな子ども」のうわさがたちます。人々はお母さんがそのように教育したのだろう、と考えますが、その子どもはたったひとりで、みなが恐れる竜に心を寄せていたのでした。

必要だったのは、誰かのやさしい言葉

 「ふしぎな子ども」と呼ばれたその子は、あるとき、自分の誕生日会に竜を呼ぼうと、いよいよその竜がいるらしい山に向かいました。これまで人間に一度もやさしい言葉をかけられたことがなく、恨みがつのり、人間たちに会うたびに唸り声をあげていた竜は、子どもの誘いに、目から涙をこぼします。その涙は、やがて川の流れになりました。

「こんな うれしい ことは ない。わたしは、このまま ふねに なろう。ふねに なって、やさしいこどもを たくさん たくさん のせて やろう。そう やって、この よのなかを、あたらしい よのなかに して やろう。」

100年経っても色褪せない物語

 浜田広介さんは、この作品のあとがきで「まことの愛には、そのうらづけに勇気があるということを、この作は意味していましょう。(中略)一つの善意が、つぎの善意をうんでいくアカシ(証明)を、この作は語っているとも言えましょう」と書いています。

 本作は、1925年に最初に書かれたものを、1965年に絵本化したものです。物語の誕生から実に100年近くたっていますが、このメッセージは、まったく色褪せることなく、物語をとおして、わたしたちに響いてきます。 

 子どもは竜に、「ぼくは おまえさんを にくみは しない。いじめは しない。もしも だれかが、かかって きたら、いつだって、かばって あげる」、という言葉をかけます。

 さまざまな噂や情報が飛び交うなかで、それらに惑わされずに、それぞれの人を尊重し、やさしさを持って接すること。それは、ひとつの主張であり、とても勇気のいることですが、やさしさのバトンはきっとこの物語のように、周りへ、世界へ、手渡されていくはずです。

 竜とふしぎな子ども、それぞれの立場や気持ちを想像しながら読みたい絵本。人間が生きる上で大事なことを伝えてくれる物語を、いわさきちひろのやさしく、カラフルな絵が彩ります。ぜひお子さんといっしょに読んでみてくださいね。

この記事に出てきた本

関連記事

バックナンバー

今日の1さつ

丁度息子がお返事をするようになったので購入しました。最後に息子の名前を呼ぶと手を上げてお返事してくれるのが嬉しくて息子と2人で楽しく読んでいます。(0歳・お母さまより)

pickup

new!新しい記事を読む