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口に筆をくわえて描く 星野富弘の「花の詩画集」

現在詩人・画家として活躍する星野富弘さんの人生が一変したのは、24歳のときでした。思いがけない事故で脊椎を損傷し、首から下が全く動かない身体になってしまったのです。自暴自棄になった期間を経て、寝たきりの日々に変化を与えてくれたのが、口にペンをくわえて文字を書くことでした。

そこからだんだんとその技術を向上させ、やがて筆で花の絵を描き、詩をそえた「詩画」は、多くの人々に感動を与える作品となりました。今回は、「花の詩画集」と名付けられたその作品集シリーズをご紹介します。

 

寝たきりの日々だからこそ、見えてくるもの

 中学校の体育教師になってまもなく、マット運動で生徒にみせた手本で脊椎を損傷する大怪我を負い、手足の自由を失ってしまった星野富弘さん。変化のない寝たきりの人生に一時は絶望した星野さんでしたが、やがて口をつかって描き始めた花の絵と、そこに添えた短い詩は、多くの人に感動を与えるようになります。(詩画を描くようになるまでの経緯は、自伝の『かぎりなくやさしい花々』にくわしく書かれています。)

花の詩画集『鈴の鳴る道』より キダチベゴニア

「花の詩画集」シリーズ(既6巻)は、入院中にキリスト教の洗礼をうけた星野さんが、「百万人の福音」(いのちのことば社)に毎月掲載していた詩画作品を中心に随筆とともにまとめた『鈴の鳴る道』からはじまります。この本のあとがきにはこのように記されています。
 私が一つの作品を仕上げるのに、だいた十日から十五日かかります。
 一日にどんなに無理をしても二時間くらいしか筆をくわえられません。また筆につける絵の具や水の量などを、私が細かく言葉で指示して、妻がそれを何度も別の紙に塗り、私に見せながら色を作るという、まことに気の長いやり方で描いています。
 こんなことができるのも、決して私達二人の力だけではありません。妻が教会に出かけたり忙しい時は、母が代りをしてくれます。弟夫婦や妹夫婦も陰で助けてくれています。
 そういう恵まれた中で、午前中絵を詩と描き、午後随筆を後述筆記してでき上ったのが、この「鈴の鳴る道」です。
 このことばは、本を開くとすぐのカバーの折返しにも掲載されています。多くの人や、さまざまな恵みに感謝しながら日々の生活を送っている星野さんの心が現れている文章です。

 星野さんが、自由に動けない身体だからこそ、花々と向き合い、おのれを振り返り、命に感謝しながらつむいだ詩画と随筆を読むと、ふと立ち止まってゆっくりと思考することを思い出したり、あるいは立ち止まらざるをえない状況でも、それをそれとして認められるような気持ちになります。

花の詩画集『花よりも小さく』より 慰め/クリスマスローズ


 

自由に動くことできて、星野さんとくらべてはるかに短い時間で多くのものを目にしていても、実際に見えているものはとても少ないのかもしれません。「いまこのとき」を生きることに忙しい私たちに、ときに遠い過去の記憶にまで思いを馳せながら、心で花の美しさを感じとる星野さんの詩画は、たくさんのことを教えてくれます。

今日マチ子さんが作品のイメージをマンガに

 現在、書店店頭で配布中の冊子「花がくれた勇気」では、本シリーズを中心に選んだいくつかの随筆と詩画をお読みいただくことができます。また、中学時代に星野さんの作品に出会ったという今日マチ子さんが、星野さんの随筆5篇を自身の体験に照らし合わせて描いたマンガも収録しています。下記より、オンラインでもご覧いただけます。

冊子「花がくれた勇気」(星野富弘 著/今日マチ子 マンガ)

 
 読む人や、読む時期によって、心に届く作品が異なるのも、詩のおもしろいところ。ぜひご自身で本を開いて、お気に入りの詩画をみつけてくださいね。

花の詩画集『あなたの手のひら』より 紫陽花

花の詩画集『種蒔きもせず』より ヒヨドリ/ツバキ

 

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