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東日本大震災の年に中学卒業をむかえる、15歳の少年少女の物語『石を抱くエイリアン』

2011年3月11日に発生した、東日本大震災。毎年3月がやってくるたび、私たちはその日を思い出します。
今回ご紹介する読み物『石を抱くエイリアン』(濱野京子 作)の主人公とその友人たちは、1995年生まれ。2010年4月に中学3年になり、2011年3月に卒業式をむかえます。実際に起きたさまざまな出来事が豊富に盛り込まれた、考えさせられる、しかし「希望」を感じられる物語です。
 

仲間と過ごす、中学3年生の1年間。

 主人公の「あたし」乙女おとめいちは、2010年の春で中学3年生になりました。クラスメイトから「姉さん」と呼ばれています。進路の選択を迫られる中、やりたいことも特になく、将来への希望を感じられない日々を過ごしています。
 
 市子と同じ班の仲間たちは5人。女子は、かわいい愛されキャラのまつうらと、吹奏楽部で熱心に活動するあおやま、男子は学級委員長でしっかり者のつるよういち、サッカー部員で沙耶のことが気になっているおおなお、そして、変わり者で知られるたかはまよしです。
 市子がやりたいことを見つけられずもやもやするかたわら、他の5人には、それぞれなんとなくの将来像があるよう。特に偉生は、臆面もなく「日本一の鉱物学者になる」と夢を宣言し、「やっぱり、こいつ、変」とみんなを呆れさせます。
 

 ある時、偉生はとつぜん市子に、「つきあってください!」と告白します。みんながいる前で告白されて、ちょっと怒ってしまった市子ですが、偉生が誘う『はやぶさ特別展』(小惑星探査機「はやぶさ」の帰還を記念した展覧会)や、日本最古の地層(2010年に日本最古であることが判明した、茂宮川最上流部にある地層)への遠足に、なんだかんだ一緒に足を運び、少しずつ偉生と親しくなっていきます。

2011年3月、卒業をむかえた仲間たちは……。

 秋の文化祭、市子たちのクラスでは、有志による展示発表をすることになりました。偉生は『原発について考えよう』をテーマに展示をしたいと発言し、受験前に手間をかけたくないみんなから白い目で見られますが、気の毒になった市子や班の仲間が参加して、各々が原発やエネルギーについて調べ、考えます。
 変わり者だけれど芯の強い偉生に、ときに呆れ、振り回されながらも、市子や仲間たちは、偉生と過ごす時間を楽しんでいるのでした。
 
 年が明けて、2011年3月。受験を終え、卒業式をむかえたみんなは、全員の合格発表が終わった後に、改めて卒業祝いの会を開催しようと約束して別れます。それを提案したのも、偉生でした。3月11日、仲間たちとお祝い会の打ち合わせをした市子は、昼過ぎに帰宅し、そこで、のちに東日本大震災と呼ばれる大きな地震に遭いました。
 
 大きな揺れとその後の停電や物資不足、余震、津波、そして福島原子力発電所の事故と、市子を襲うさまざまな不安。市子はいっぱいいっぱいになりながら、なんとか家族で数日を過ごし、ふたたび仲間たちと集まります。
 
 お祝い会はやむなく中止になりましたが、班のみんなの顔をみて、安心する市子。しかし、偉生の姿だけがありません。そういえば11日の金曜日、週末に祖父母の家に遊びにいく、と偉生は市子に話していたのでした。
 市子の耳に、以前偉生が話していたことが蘇ります────「どこ?」「いわき市。海がすぐそばなんだ」


実際に起きたさまざまな出来事が登場する、ノンフィクションのようなフィクション

 主人公たちが1995年生まれに設定された本作。東日本大震災だけでなく、彼らが生まれた年に起こった阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件など、大きな出来事が数多く登場します。この年を「時代の流れが変わった年」ととらえる人も多く、作者の濱野京子さんも、1995年にはこだわりがあったといいます。
あの阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件の年に生まれた多くの子どもたちが、中学卒業時に東日本大震災に遭遇するとは、なんという巡りあわせだろうかと、感じいりました。
人は、場所も時代も、そして親さえも、選んで生まれてくることはできません。だれもが不条理の世を生きるしかないのです。地上に満ちあふれる数多の悲惨なできごとを見るにつけ、その思いはいっそう深くなります。
(あとがきより)
 
 彼らが生まれる以前の事件や事故も含めて、実際に起こった出来事から目をそらさず、つぶさに描くことで、この物語に厚みが生まれています。もちろん、「はやぶさ」の帰還や、チリの鉱山事故からの作業員33名の生還、2020年のサッカーワールドカップなど、明るいニュースも豊富に登場します。
 
 あとがきの最後で濱野さんは、「この物語が、若い人びとの「希望」を後押しできるものになればと願っています」と書かれています。さまざまなことを考えさせ、希望を与えてくれるこの物語。同世代の子どもたちや、同じ1995年生まれの方々、そして大人のみなさんにも、ぜひ味わっていただきたい作品です。
 
(装画:米田絵理)

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