2021年は丑年です! うしが出てくる偕成社の絵本といえば、『もりのなか』(福音館書店刊)などで知られるマリー・ホール=エッツの、『モーモーまきばのおきゃくさま』(やまのうちきよこ 訳)です。うしは、おいしい草をごちそうしようと、春の牧場にどうぶつたちを招待するのですが……?
どうぶつたちを牧場に招待! 楽しくあそぶものの……
春、モーモーまきばで草をたべていたうしは、あまりにおいしくて、こんなふうに思います。
「なんて おいしい くさ なんでしょう。きれいな きんぽうげも さいてるし…… だれかに ごちそう してあげたいわ。」
さっそく、まきばに、馬、やぎ、犬、ねこ、ぶた、ひつじなど、どうぶつたちがやってきました。みんなは、うたったり、輪になっておどったり、おにっごっこをしたりと楽しみます。
ひとしきりあそんだあと、うしは、いよいよ草をごちそうしようと、こういいました。
「では、おしょくじに いたしましょう。さあ さあ、どうぞ ごえんりょなく。こんなに たくさん ありますから。」
ところが、どうぶつたちはちっともよろこびません! 犬は骨を、ねこは魚の頭を、ぶたは残りごはんを、と、みんなちがったごちそうを期待していたからです。がっかりしたどうぶつたちは、次々に帰っていってしまいました。
悲しい気持ちになるうしですが、まだまきばには、のこっているどうぶつもいました。馬と、やぎと、ひつじです。草がだいすきな馬たちは、うしと一緒にごちそうを食べはじめ……春がおわり、夏になって、夏がおわるまで、ずっと「モーモーまきばのおきゃくさま」になってくれたのでした。
好きなものがちがうこともある。でも、分かちあえたときのうれしさは格別!
この本の主人公であるうしは、やさしい心の持ち主です。自分の好きなものをみんなにも分けてあげたい、という気持ちでみんなをさそい、楽しく過ごしますが、食事の段になって、みんなが同じものを好きなわけではない、ということを知り、悲しい気持ちになってしまいます。でも、そのおかげで、同じ食べものを好む仲間に出会うこともできました。
まきばでのできごとを通して、いろんな好みがあること、仲間が見つかるうれしさを、しぜんに教えてくれる一冊。新しい年にも、そんなうれしい出会いが待っていますように!