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偕成社文庫100本ノック

第60回(プレイバック中!)

アーサー王物語

2019.06.18

『アーサー王物語』ジェイムズ・ノウルズ 作/金原瑞人 編・訳

 聖剣エクスカリバー、魔術師マーリン、アーサー王の円卓、湖の騎士ランスロット、聖杯伝説……。
 ゲームや漫画、ファンタジー小説でもよく聞くこういった物や人、詳しく説明できますか? 説明できない方には、是非『アーサー王物語』を読んでいただきたいです。特に「かっこいい」本を読んでみたい方、いかがですか?

 そもそもアーサー王というのは5~6世紀のイギリスに……なんて小難しい歴史の話をする気は(今日は)ありません。アーサー王の話はあくまで伝説、物語ですから。基本要素は
 1、アーサー王という偉大な王様がいた。
 2、アーサー王に忠誠を誓った騎士たちは円卓(丸いテーブル)の騎士と呼ばれた。
 3、円卓の騎士団にはたくさんの有名な騎士たちがいて、それぞれに武勇伝がある。
 という3つです。簡単ですね。
 さて、アーサー王やその騎士たちの武勇伝はひとつひとつがおもしろく、いろんな人がいろんな形でまとめています。海外で何種類もあるのですから、それを日本語に訳すとなれば更にまた何種類もあるはず。その中でも私がこの『アーサー王物語』をおすすめする理由として、程よいエピソードが抜粋されていること、そして「かっこいい」ことをあげたいと思います。言葉が。騎士たちが。ちょっと読んでみましょうか。

「ガウェインは騎士をみると、槍を寝かせ馬をまっすぐに騎士のもとへ走らせていき、何者かとたずねた。
『トスカナ人だ。さあ、一対一でためしてみるか。捕虜になるまで、いかせはしないからな。』
そこでガウェイン卿はいった。
『これはまたずいぶんと大きく出たな。口だけは達者なようだが、せいぜいけがをしないように気をつけるがよかろう。』
 ふたりは槍をとって全速力でぶつかりあい、槍はたがいの楯をつらぬいて相手の肩を突きとおした。ふたりは次に剣を抜くと激しく切りあい、たがいの兜から火花が散るほどだった。」

 ほら、かっこいいでしょう。迫力満点でしょう。え、ガウェインって名前が読みにくい? トスカナってどこかわからない? いいんです、何となくでも字で覚えてとりあえずは分かるところだけ読めば。何となくの重々しさとかかっこよさが伝われば。
 もちろん本文にはふりがなもふってありますし、難しい言葉はきちんと本の後ろに解説がありますし、「この人だれだっけ……」と思った時には巻末の「アーサー王物語事典」を読めば大体書いてあります。便利!

 訳者の金原瑞人さんも解説でこう書いていらっしゃいます。
「というわけで、この本は思い切り『かっこよく』訳してみました。『だった』『なのだ』という文体を使い、むつかしい漢字もばんばん使っています。すこしくらい意味がわからなくても、かまわず先へ進んでください。そしてときどき、声にだして読んでみてください。こういう日本語もあるのです。ぼくの想像のなかの『アーサー王物語』はこういう言葉でできているのです。」
 わたしの想像のなかの「アーサー王伝説」もこういう言葉でできています。表紙や中身の佐竹美保さんの絵もやっぱりかっこいい。正直、学校や電車で、この本読んでたら絶対にかっこいいと思いますし、マーリンがどんな魔術師だったか言えちゃうのもかっこいい。伝説の中の「騎士」は基本的にかっこつけの生き物です。日本の武士とは少し違うけれど、やはり自分の名誉と主君と女性のために戦うのです。そんなかっこつけの騎士たちの物語をかっこつけて読むのも、たまにはいいんじゃないでしょうか。「かっこいいから」読む経験、大人にも子どもにも大事だと思います!

(販売部 高橋)

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