今では極度の虫嫌いな僕も幼稚園に通っていた頃は毛虫でもミミズでも何でも触っていたことを微妙に記憶している。すごいなあと今の自分は思う。それから少し大きくなった小学校の3年生くらいの時にはある程度虫嫌いが進んでしまっていて、夏のセミなんかも友達の前でだけは掴んでみせることくらいはできていたはずだが、1人では絶対に触らなかったし、セミがミンミン鳴いている木の近くは避けて歩くのが普通だった。ただ、実家は田舎だったのでセミが鳴きまくっている木を完全に避けることは不可能だった!
それほどまでに虫が苦手だった僕も、小学校の高学年になる前まではクワガタやカブトムシとかを家で少しの期間だが飼育していたことがある。僕の実家の周りは田舎だったので神社や林に行けば結構な確率でカブトムシがいた。でもクワガタは手に入りにくかったので、恥ずかしい話だが大きな神社の近くに住んでいる女の子にもらった。作品中に登場するクワガタの中では、ミヤマクワガタ、コクワガタ、ヒラタクワガタ、ノコギリクワガタを飼い、時には子分にもしていて(大人しくて大きいミヤマクワガタが僕は好きだった)、その飼育期間はすごく楽しくて充実していたことをこの作品を読んで思い出すことができた。
主人公の小学校2年生の太郎くんは念願のクワガタを3匹同時に見つけた初夏のその日から、命について多くの経験を積んでいくことになる。様々な予想外のハプニングがあってその度に成長していく純粋で好奇心旺盛な太郎くんと、それを見守る優しいお母さんとの自然で心和む会話のやりとりもこの「クワガタクワジ物語」の魅力の1つ。
本を開くと物語に入る前に「いろいろなクワガタムシ」という14種類のクワガタのカラー写真が名前、全長、分布の解説が付いた特別ページが8ページ。しかも、その写真の撮影は昆虫写真家の海野和男さん。
いま夏を満喫している小学生に、そして当時の夏休みを懐かしみたい大人になったあなたにも、読んでみて欲しい1冊。
(販売部 嶋田)