子どものころ、大人って変だなあとおもっていました。毎日仕事をしなくちゃいけないし、どうやら責任感みたいなものがないといけないみたいだし、なんかめんどくさいなあと。できることならば、大人にはなりたくないものだ、と心に決めていました。でも、否応なく年月はすぎ、どうしてか大人になってしまいました。今、子どもたちがかつての私のように大人である私のことを見ているのかと想像すると、ちょっと辛いです。ほとんど当たってるんだけど、子どもにはわからない大人のよさがあるんだよ!と拳をにぎりしめたくなります。(まあ、ほとんど当たってるんだけど……)
ドイツの寄宿舎でくらす子どもたちの毎日をえがいた『飛ぶ教室』。この本を読んでうれしかったのは、「かっこいい大人」が出てきたことです。子どもからの信頼を勝ちとるに値する大人ふたりです。「クロイツカム先生」と「禁煙さん」。このふたりのことを知って、私は「大人になってよかった、本当によかった…」と涙してしまいました。私がこのふたりのように子どもから見てちゃんとした大人になれているかどうかはとりあえずおいておいて、こういう大人がいるのなら、その仲間入りをしたのも悪くないな、そうおもえたのです。ケストナーさん、子どもにむけて書いたふりして、もしかして大人を応援してくれてるのかもしれないです。(もちろん、子どものことは大応援しています。私も小学生のころに読みたかったです)
「禁煙さん」が作中で言う「子ども時代をわすれないで」はそのまま、作者ケストナーのメッセージです。忘れたい子ども時代もありますが、よかったところをよりぬいて忘れないように生きていこうと、心に決めました。
もうひとつ、この本は目次がかっこいいです。それぞれの章についている副題がすばらしいのです。
「6章 六頭だての馬車の絵、古びたジョークをたのしむこと、バルドゥインという名まえ、びしょぬれ事件、おばけのパレード、かゆみの粉をまく動物、窓べのジョニーと将来の計画」
みたいに。また読みなおしたくなりました。
(編集部 秋重)