みなさん、クッキーは好きですか? お店で買うクッキーもおいしいですが、手作りしたクッキーを熱々のうちにほおばるのも幸せなひとときですよね。パット・ハッチンスのロングセラー『おまたせクッキー』(乾侑美子 訳)では、お母さんが兄妹のためにチョコチップクッキーを焼いてくれます。ところが、そのときお客さんがやってきて……? くり返しが楽しい絵本です。
最初はふたりで分けるはずが……
ある日、ビクトリアとサムのお母さんが、クッキーを焼いてくれました。全部で12枚あります。
「六つずつだね」ふたりは かぞえて いいました。
「まるで、おばあちゃんがやいた クッキーみたいにおいしそう」
ビクトリアがいうと、サムも、
「においも、おばあちゃんが やいたのと おなじだ」
お皿に分けようとしたとき……、ピンポーンと玄関のベルが鳴りました。やってきたのはおとなりのトムとハナ。お母さんは「ちょうどよかったわ」とふたりをまねきいれます。子どもが4人になったので、クッキーはひとり3枚。
さあ、ここまでは、ビクトリアとサムも平然としていました。ところが、またピンポーン! 今度はピーターと、その弟がやってきます。そして、いざ食べようとすると……ピンポーン! さらにさらに、友だちがやってきて……なかなかクッキーを食べられません。とうとう、クッキーの配分はひとり1枚になってしまいました。
けれども、またもやドアのベルが鳴ったのです! みんなは思わず、じっとドアの方をみました。やってきたのは……? 最後はうれしい展開で、みんなハッピーになれる絵本です。
読者も一緒に楽しめるアイデアがおもしろい、ハッチンスの絵本
パット・ハッチンスは、イギリス生まれの絵本作家。偕成社ではほかに、『ロージーのおさんぽ』『ベーコンわすれちゃだめよ!』などの絵本を出していて、いずれもロングセラーとなっています。
ハッチンスの絵本の魅力は、独特のイラストと、アイデアのおもしろさにあります。『ロージーのおさんぽ』は、実はほとんど文字のない絵本。場面の展開だけで、絵本の世界に引き込み、読者をわくわく、そわそわさせてくれます。「お話を想像する」楽しさをあたえてくれる絵本です。
『ベーコンわすれちゃだめよ!』は、男の子がお母さんに頼まれた買い物のリストをとなえながら歩くのですが、途中でだんだんこんがらがってきてしまいます。主人公と一緒に、読者も買い物リストを暗唱するのに挑戦できる絵本です。
今回紹介した『おまたせクッキー』では、やってくる友人の数をかぞえて、ひとり何枚クッキーを食べられるかを考えるのも、楽しみ方のひとつですね!
読者が一緒に絵本に参加できるハッチンスの絵本。ぜひほかの作品もあわせて、お手にとってみてくださいね。