さあ、『怪盗紳士ルパン』です!
本書は「ルパン逮捕される」を含む9編の連作短編集です。そして「ルパン逮捕される」は、世紀の大怪盗アルセーヌ=ルパンが初めて世に出た記念すべき1作目でもあります。タイトル通りにルパンは逮捕されてしまうのですが、この物語は作者のモーリス=ルブランがいやいや書き始めたものだったため、ルパンが捕まってしまえば続きを書かなくていいだろうという気持ちで書いたそうですよ。それが世界で最も有名な大泥棒のスタートになるとは、世の中とは不思議なものです。
さて、皆さんはルパンと聞いてどのようなイメージが浮かびますか。
シルクハットに黒いマントの中年紳士でしょうか? それとも、ルパンルパーン♪ のルパン三世? 読んでもらえるとわかるのですが、どちらも共にほど遠い感じですね。
この『怪盗紳士ルパン』の9編には若かりし日のルパンが描かれています。用意周到で計算高く、変幻自在の変装術を持ちながら、時にドジも恋もする人間くさい青年。人は殺さず、盗むのは大富豪や権力者からだけ。それでいて「なぜ世間の人間は、泥棒というこんな気楽な商売を選ばないのかね? 一家の父にふさわしい職業だ」などと言ってしまう不道徳さ。物語の中でも「知性と邪悪、不道徳と寛大とを奇怪にまぜあわせた」人物と評され、そのアンバランスなキャラクターに世界中の読者は魅了されてきたのかもしれません。
『怪盗紳士ルパン』9編の中で個人的なおすすめは「ルパンの脱獄」。
「ぼくは裁判には出席しない」と刑務所からの脱獄を予告。果たして、ルパンはどのような手段で脱獄を成功させるのか。警察当局とルパンとの駆け引きも面白い物語です。変装・トリック・格闘(ルパンは日本の柔道をつかうのです!)と期待すべき要素が詰め込まれ、何より、ルパンの過去に関する情報が多分に出てくる点も楽しいところですよ。
「何で今まで読まなかったんだろう?」そんな1冊になること間違いなし! シリーズはたくさん出版されていますが、まずは『怪盗紳士ルパン』から読んでみてくださいね。
(販売部 大西)