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絵本の相談室

保育士が答える! 0123歳のちょっとしたお悩み 第8回

子どもにさまざまな体験をさせたいけれど、コロナ禍でどこへも行けず・・・・・・。人との接触もさけていて、大丈夫なのか不安になります。

新型コロナウィルスの影響でさまざまな思いをされている人が本当にたくさんいると思うと、心が痛みます。

保育園でも、子ども同士でたわむれて遊ぶすがたをとめなければいけなかったり、保育者は子どもと一緒にご飯を食べてはいけなかったりと、子どもたちの生活も制限されることがたくさんあります。

家族のあり方もさまざまで、子どもと過ごすことを楽しいと感じる人もいれば、毎日だと苦痛に感じる人もいると思います。まずは無理をしないことが大事です。

子どもは、遠くへでかけたり、「特別」だったりしなくてもいい。

でも、コロナ禍でも変わらず、動きまわりたいのが子どもたちです。

近くに公園はありませんか? 特別、遠くなくてもいいのです。大きな木が一本あったら、その木かげで過ごしてみるのはどうでしょう?

風が吹いたら、葉っぱがさわさわと音をたてる。そんな現象も不思議に思うのが、子どもたちです。足もとにはアリが行列を作って何かを運んでいたり、雨あがりならカタツムリが動いていたりするかもしれません。

お風呂のお湯を少しだけはって水遊びも楽しい。水は無限に子どもたちをひきつけます。ポタポタと落ちる水、はねる水、輪を描く水・・・・・・。そんな水の表情に心をうばわれる子どもを見ていると、好奇心いっぱいだった子どもの頃の自分を思い出す機会になるかもしれません。

(子どもは5センチの高さの水や、もっと少ない量の水でもおぼれるといいます。小さい子がいる家庭における不慮の事故のかなり多くは水に関連するもの。どうか遊ぶときは目を離さないでください)

大きな紙や、カーテン、洗濯ばさみも子どもたちの遊び道具になる!

大きな紙を用意して、そこにおもいきり絵を描いてみるのおすすめです。そのときは子どもたちが自由に描くすがたを黙って見守ってあげてください。「〇〇を描いてごらん」「それはなに?」と声をかけすぎると、表現する楽しさを子どもたちからうばってしまうことになるようです。わたしは、ちゅうちょなくクレヨンや筆を動かす子どもたちをうらやましいと思って見ています。

1才や2才ぐらいの子なら、カーテンの揺らぎを感じたり、洗濯ばさみをたくさん用意してつなげたり、段ボールにはさんで遊んでみたりしてもいいかもしれません。

実際にクッキーやホットケーキを作ってみるのもおすすめ。子どもたちは粉を混ぜることしかできないかもしれないけれど、粉がおいしい食べものになる過程は、不思議でおもしろいことのようです。

なぞなぞやクイズなどの言葉あそびを楽しんでみるのもいいかも!……と言っても、0・1・2歳の子たちに、言葉あそびはむずかしい。「どっちの手に入っているか?」とか「なーんだ?」というあてっこ遊びも大好きです。

なにより、じぶんにまなざしを向けてくれている時間が幸せ。

お父さんやお母さんが、じぶんにまなざしを向けてくれている時間が、子どもたちにとっては、幸せな時間です。

「まなざしを向けるって言われてもむずかしい」と思ったら、やっぱり絵本です。

絵本を見ながらどこかへ行った気分になったり、子どもたちならではの視点を感じたり、行ってみたいなあと思いをはせたりすることもできるのでは!?

コロナ禍で図書館で本を借りるのがむずかしいときは、買ってしまいましょう。家族ででかけることを思ったら、絵本はそんなに高くない。一生大事にできる1冊と出会える機会になったら、それはとてもいい思い出になるのではないかと思います。

でかけられない今、一生大事にできる1冊と出会う機会になれば、きっといい思い出になる。

『うみへいくピン・ポン・バス』(竹下文子・作、鈴木まもる・絵、偕成社)

特急電車を降りて、バスに乗る。バスターミナルのバスは色とりどり。町にはタンクローリーやトラック、消防自動車など、たくさんの車が描かれているので、子どもたちは何度でも見たい。町の生活が優しい視点で描かれているのがとてもいい。犬や猫たちが一緒に生活していたり、音楽を楽しむ人がいたり、特急電車から合図する運転手さんが描かれていたり。「あっ、うみだ!」と男の子がさけんだ先に描かれている青い海に、いつか行ってみたいと希望が持てます。

『ぞうくんのさんぽ』(なかの ひろたか作・絵、なかの まさたか・レタリング、福音館書店)

ごきげんなぞうくんが、さんぽにでかける。かばくんも誘うと「せなかに のせてくれるなら いっても いいよ」と言う。ぞうくんの背中に、かばくん、わにくん、かめくんがのる。「うん うん、おもいぞ」と歩いていくと「どっぼーん」と池の中へ。びっくりした子どもの中には「あーあ。落っこちちゃった!」と言う子も。最後は「みんな ごきげん きょうは いいてんき」でおわる。大変なこともあるけれど、さんぽにでかけて「ごきげん」な気持ちになったらいいなあ。

『いちにのさんぽ』(ひろかわさえこ作・絵、アリス館)

顔が画面に入らないほど大きな子どもがさんぽ。「いちに いちに いちにの さんぽ さんぽ ぽくぽく いい きもち」と歩いて、ありさんにこんにちは。あいさつするのがありさんだから、子どもは大きく描かれているんだと感心。そこからいっしょにさんぽするのは、いぬ、くま、きょうりゅう。小さな絵本なのに、大きなきょうりゅうも違和感なく見ることができる。最後はおひさまに「こんにちは」。夕日に向かって「また あした!」って言えるような夕方の散歩も楽しいかも!

『やまのぼり』(さとうわきこ作・絵、福音館書店)

「やまのぼりでもするか」と、ばばばあちゃんが言うので、賛成するこいぬとこねこ。もりのともだちもよんでくる。たくさんの荷物や遊ぶものをもってやってくる動物たち。「こんなに たくさん にもつ もってきて どうするんだい」とあきれながらも、名案を考えるばばばあちゃん。「やまを こっちに つくっちゃえば いいじゃないか」と、カーテンをぬいあわせた布を家にかけて、すてきな山に! 発想の転換をすれば、近くだって十分に楽しめるってことを教えてくれます。

『ピヨピヨはじめてのキャンプ』(工藤ノリコ作・絵、佼成出版社)

ピヨピヨ一家がキャンプにやってきます。テントのはりかたも本格的。「みんなの しごとは たきぎひろいですよ」と言われて、ひろいにいく。きのこをみつけ、たくさん集めているうちに迷子に。カッパの子どもたちに助けられ、ふたつの家族で晩ごはん。きのこカレーや焼き魚。キャンプならではの景色が広がる。裏表紙には、お父さんとお母さんがコーヒーを飲むシーンが描かれている。川にうつってゆれる月の光もすてき。このシーンはとってもいい。キャンプに行った気分を味わえます。

『だ~れだ?』(ヒド・ファン・ヘネヒテン文・絵、竹内要江・訳、PIE International)

「へびさんのような なが~い おはなの いきもの だ~れだ?」と読んで、しかけをめくるとそこにはぞうさんが! クイズのように「だ~れだ?」がでてくるので、子どもたちはちょっと考える。2回目からはしっかり覚えていて、何度でもくりかえし見たい。答えがわかっているからこそ、何度でも読みたくなる。「いないいないばあ」をくりかえし楽しむようなシンプルなしかけ。「だ~れだ?」とたずねることで親子での会話もはずみます!

『ノンタンのたんじょうび』(キヨノサチコ・作、偕成社)

ノンタンの誕生日をないしょで準備する友だちたち。好奇心いっぱいのノンタンだけど、みんなは何をしているのか教えてくれない。泣いてすねていると、みんなが「いいこと、いいこと。ないしょ、ないしょ」と、めかくししてノンタンをつれていく。そこにはノンタンのクッキーとケーキが! この本にはノンタンクッキーの作り方がついている。薄力粉、バター、たまご、砂糖にベーキングパウダーというシンプルなクッキー。子どもと一緒に作ったら、きっと楽しいはず。わたしも園で子どもたちと作ったことがあります。(ノンタン公式サイト

『しろくまちゃんのほっとけーき』(わかやまけん・作、もりひさし・作、わだよしおみ・作、こぐま社)

ホットケーキ作りといったら、この絵本。「わたし ほっとけーき つくるのよ」とストライプのエプロンをつけたしろくまちゃん。たまごを落として割ってしまったり、粉を飛び散らかしたり。自分の子どもだったら「何やってるの?!」と言いたいことも、しろくまちゃんならほほえましく見てしまう。子どもたちが大好きな、ホットケーキを焼くページはなかなかめくらせてもらえない。最後はお皿洗い。食器を洗うときに違うエプロンをつけていることを、子どもたちは見逃しません。


安井素子(保育士)
愛知県に生まれる。1980年より公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年以上。1997年から4年間、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、子どもたちとの日々をつづる。保育園長・児童センター館長を経て、現在は中部大学で非常勤講師として保育と絵本についての授業を担当。保育者向け講演会の講師や保育アドバイザーとしても活動している。書籍に『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)、『0.1.2歳児 毎日できるふだんあそび100ーあそびに夢中になる子どもと出会おう』(共著、学研プラス)がある。月刊誌「あそびと環境0・1・2歳」(学研)、ウェブサイト「保育士さんの絵本ノート」(パルシステム)、季刊誌「音のゆうびん」(カワイ音楽教室)で連載中。

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今日の1さつ

久しぶりに絵本を読みました。就職のため引越しする前にこの本を読み、心が少し明るく前向きになりました。窓をあければ、その土地のいいところが見える。それぞれの景色がある。私も新しい土地のありのままを好きになれますように。期待に胸が高鳴る、すてきな本でした。(20代)

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