えんとつから家の中にとびこんだのは、だれかが打ち上げたホームランボール。家主の迷惑もかんがえず、あっちこっちへとび跳ねて……。『おうさまのおひっこし』、『どろぼうのどろぼん』(斉藤倫 作)などを手がける現代美術作家、牡丹靖佳さんの絵本『めいわくなボール』をご紹介します。
これでもか!とあばれ回るホームランボール
あつくもなくて、さむくもない、そんなある日の午後のこと。少年たちが打ち上げたホームランボールが、すぽりととある家のレンガのえんとつにとびこみました。
ダダーンとだんろからとびでたボールは、灰をあたりにまきちらし、壁にかかっている額を次々とおとし、なべぶたをジャーンと響かせて、家中を散らかしながら、あちこちとび跳ねていきます。
さんざん家の中をひっかき回したあと、ようやく窓から出ていったと安心したのも束の間……。最後の最後まで、ボールの迷惑のかけっぷりはおみごと!
タイトルに引けをとらず、「これでもか!」とばかりにあばれ回るボールの、そのあまりの理不尽さには、ついつい笑ってしまう魅力があります。
うつくしいインテリアにうっとり
本作は、作者の牡丹靖佳さんならではの絵がなんといっても魅力です。リビング、キッチン、子ども部屋、書斎……とボールが一軒家をひと部屋ずつめぐっていくのですが、それぞれの部屋のしつらえに、きっとうっとりすることでしょう。
うつくしい模様の壁紙や、凝った絵付けの花瓶、タッセルのついたクッション、古めかしいレコードプレーヤーや地球儀など、瀟洒な洋館に迷い込んだようなインテリアを存分に楽しめます。
また、作者が「お母さんが子供に読んであげるときにも、いい間合いで読んでもらいたいとか、考えることはたくさんあった」※というように、なじみ深い七五調のリズムで、聞いても声に出しても心地よい文章がつづられています。
ひとりで読んでも、読んでもらっても楽しい一冊です。
※くわしくは、刊行当時のトークイベントのレポートをご覧ください。
『めいわくなボール』制作秘話! 牡丹靖佳さん×担当編集者