「るるるるる」「ははははは」。この文字をみて、どんなことを想像しますか? 絵本作家の五味太郎さんは「るるるるる」を、飛行機の飛ぶ音に見立てました。「ははははは」の方は、想像がつくかもしれません。そう、笑い声です。このように、ほとんど同じ文字のくり返しだけでできているのが、「音と文字の絵本」シリーズ(五味太郎 作)。ここでは、2点をピックアップしてご紹介します。
飛行機が飛んできた! 『るるるるる』
『るるるるる』では、まずはじめに、ページいっぱいに青い場面が広がります。そこには「るるるるる」の文字が。
この青は、空? それとも海? ページをめくると、同じ「るるるるる」の文字に加え、飛行機が現れました! これで、舞台は空だとわかります。
るるるるる るるるるる るるる。ページごとにだんだん飛行機が近づいてきて、文字も大きくなり、飛行機は雲に「る」とぶつかります。雲の中では、「るるるるる」の文字も薄くなり、雲を抜けて夜の世界に入ると、「れれれれれ」と飛ぶ音が変わり……。
そのあとも、飛行機の旅はつづきます。「る」の文字は、傾いたり、割れたり(!)と、形もユニークに変化します。
いろんなものがゆかいに笑う! 『ははははは』
『ははははは』には、さまざまな人やものが登場します。
「は ははははは」(歯)
「はは ははははは」(母)
「はな ははははは」(花)
「はた ははははは」(旗)
などなど、文字のほとんどを「は」が占めています。シンプルなくり返しに、次は何が出てくるのかな? と楽しめます。
こんな、2種類の「はし ははははは」も!(箸と橋)箸の方は、カタカナの「ハ」の形になっています。
人もものも、みんなが笑っているのも良いところです。
同じ文字のくり返しが、文章になったり、音になったり。
このシリーズにはほかに、
汽車が線路をはしっていく『ぽぽぽぽぽ』
ブルドーザーが土をほる『どどどどど』
「ビビビビビくん」が動物たちに光線をあびせる『ビビビビビ』
夜、町で鳴っている音を表現した『りりりりり』
犬が散歩中にふしぎなものを見つける『んんんんん』
などがあります。どれも、ご紹介した2点と同じく、文中に出てくるのは、ほとんどタイトルの文字のみ。それでも絵と合わさって、ストーリーが明確に伝わってきます。
また、おもしろいのは、文字を追っていくと、その音が聞こえてくること。とくに『りりりりり』では、家の中や外、道路や公園といった場面に添えられた「りりりりり」の文字が、音としてありありと感じられます。虫の鳴き声か、はたまた町の音なのか……と、想像がふくらみますね。
ユニークな発想から生まれた「五味太郎 音と文字の絵本」シリーズ。五味さんの絵もたっぷり味わいながら、読んでみてください。