夜中に子どもの具合が悪くなったら、どうすればいいのでしょう? 今回ご紹介するのは『ねこの小児科医ローベルト』(木地雅映子 作/五十嵐大介 絵)。夜間専門のねこのお医者さん・ローベルトをむかえた家族の一晩を描いた絵童話です。
夜中にお医者さんに電話をすると……来てくれたのは、ねこでした!
ある真夜中、ユキが目を覚ますと、となりで寝ていた弟のユウくんが、げろを吐いて苦しそうに泣いていました。あわてて飛び起きたお父さんとお母さんは、汚れた布団とパジャマを洗って、ユウくんをお風呂に入れます。一息ついたと思ったら、今度はうんちを漏らしてしまい、また洗濯して、お風呂に入れて……その後も、寝たり起きたりの繰り返し。お父さんとお母さんは休まるひまもなく、ユキも落ち着いて寝ていられません。
ユウくんの具合がなかなかよくならないので、お父さんとお母さんはとうとう、病院に電話をかけることにしました。しかし、真夜中の電話をとってくれる病院なんて、なかなか見つかりません。やっと電話がつながったと思ったら……小さなバイクにまたがって家に駆けつけてくれたのは、どこからどう見ても、ねこでした!
ねこは「松田ローベルト」と名乗り、トイレで苦しんでいるユウくんのもとへ。ユウくんのおでこに前足を当てて「ふむ。37度6分ってカンジかにゃー……。」そしておしりをカサカサとふいて、おむつをはかせます。水分をとっていないことを知ると、経口補水液をスプーンですくって、少しずつユウくんに飲ませます。なんとも手際よく、ユウくんのことを診察してくれました。
ユウくんは、感染性胃腸炎の一種・ロタウイルスにかかっていたのでした。「ぼくぐらいの小児科医ともなると、げりのにおいだけで、食あたりなのか、ねびえなのか、O-157なのか、もうぜーんぶわかっちゃう。」のです! また「げりは、ただたんに、ひとをこまらせようとおもっておきるわけじゃありません。からだにとって、どくになるものがあるから、だそうとしているわけです。」と家族に説明をし、下痢止めは使わず、脱水症状にならないように、少しずつ水を飲ませるようにと教えてくれました。それから、発展途上国の中には、日本では薬がいらないような病気でも、きれいな水や、清潔な服がないために、死んでしまう子どもがいることも……。ユキは、もっとローベルトとお話していたかったものの、ひと足先にベッドへと入りました。
翌朝ユキが起きると、ユウくんはすっかり元気になって遊んでいました。ユキは、ローベルトのことを家族に聞きますが、なぜか昨夜のことをだれも覚えていません。ユキが不思議に思っていると、リビングの座布団の上で丸まって眠っていたのは……?
絵を手がけたのは、『海獣の子供』の五十嵐大介さん!
絵を手がけたのは、『リトル・フォレスト』『海獣の子供』などで人気の漫画家・五十嵐大介さん。作者の木地雅映子さんたってのご希望で、このふたりのタッグが実現しました! 五十嵐さんの絵が、全ページにカラーで入っているのもポイント! ねこ好きにはたまらない、ローベルトのかわいい仕草や細かい描写を存分に堪能できます。
木地雅映子さんは、自身の子育てを振り返って、「超絶ブラックなワンオペ育児をしているところへ、トドメをさすように病気が重なると、たとえそれがごくありふれた病気であっても、すぐそこに死への扉が開いているような気持ちがしてきてしまいます。」と、刊行時のインタビューで語っています。そんな子育て時代のトラウマから生まれたのが、真夜中に具合の悪い子どものもとへ駆けつけてくれる、ねこのローベルトだったのです。「こんなお医者さん、いたらいいなあ」という気持ちになる1冊です。