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「なかまとちがっても なんとかうまく 生きていった」動物たちの短編集『しまのないトラ』

寅年に読みたい短編集『しまのないトラ』(斉藤 洋 作/廣川沙映子 絵)をご紹介します。サブタイトルは「なかまとちがってもなんとかうまく生きていったどうぶつたちの話」。5つのお話が入っていて、主人公はみな、仲間と少しちがったところがある動物たちです。今回は、表題作「しまのないトラ」のお話をご紹介しましょう。

しま模様がないせいで、狩りが苦手なトラは……

 舞台は、インドのずっと西の方にある、うっそうとしげったジャングル。そこに住むトラたちは、木々や茂みにかくれながら、抜き足差し足、獲物に忍び寄って狩りをするのが得意です。体のしま模様が、うまく木々の中にトラたちを隠してくれるからです。

 一方、獲物を獲らずに、沼の水を飲んだり、バナナを食べたりして、すきっ腹を満たしているトラが1匹いました。そのトラは、体のしま模様がなく、うまく狩りをすることができないのでした。そのせいで、いつも周りのトラたちにからかわれています。

 「なんでぼくには、黒いしまがないんだろう。黒いしまさえあれば、もっとじょうずにかくれることができて、たくさんえものをとることができるのになあ……。」

 ある日、そうつぶやいたしまのないトラのもとに現れたのは、1羽のワシでした。「なんだってまあ、そうやってウジウジしてるのかね。そんなこったから、みんなにばかにされるんだ。(中略)まあ、そこで見ていろ。」

 そう言うと、いきなりある1羽の鳥めがけてぐんぐんと空高く舞い上がり、見えなくなってしまいました。しばらくして戻ってきたワシの足には、見事に獲物がかかっていました。

 「おれからのプレゼントだ。それをくいながら、いま見たことをおもいだして、おまえがどうするべきか、よくかんがえるんだな。」

 ワシは、どこかにかくれながら獲物をとったわけではありません。獲物からワシのすがたはよく見えていたはず……それなのに、ワシにつかまってしまいました。さて、しまのないトラが、ワシから得た狩りのヒントとはなんだったのでしょうか。

仲間とちがっても、アイデアや努力で自分の生き方を見つける動物たち

 この本には、ほかに「つのがないバイソン」「しっぽのみじかいマングース」「足のあるヘビ」「八本足のイカと十本足のタコ」と、少し変わった体の特徴をもった動物たちが主人公のお話が収録されています。どの動物も、アイデアや努力、勇気などによって、最後には、自分らしい生き方を見つけます。

 作者の前書きには、こう書かれています。

もし、あなたが、ともだちやなかまとちょっとちがうところがあって、そのことでこまっているなら、この五つの話をよんでください。また、もし、ともだちやなかまとちがうところがあなたのじまんなら、やっぱりこの五つの話をよんでみてください。

それから、だれかがあなたとちがうところがあって、そのことがどうしても気にいらなければ、そういうあなたにも、やはりこの五つの話をよんでほしいとおもいます。

 ハッとした方は、ぜひお手にとってみてください。きっとこわばった気持ちがほぐれて、少し気楽になれるはずです。

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今日の1さつ

毎日をまじめにコツコツ生きるトガリネズミを見ていたら、自分の日常ももしかしてこんなに静かな幸せにあふれているのかも、と思えました。海に憧れて拾ったポスターを貼ってみたり、お気に入りのパン屋さんで同じパンを買ったり。駅中の雑踏やカフェでふとトガリネズミを見かけそうな気がします。(40代)

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