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今週のおすすめ

ダウン症のアイちゃんの学校生活を追う、ドキュメンタリー写真絵本『アイちゃんのいる教室』

1年1組のアイちゃんは、ダウン症です。でも先生はそのことを、クラスのみんなに説明したことはありません。アイちゃんの学校生活に密着した『アイちゃんのいる教室』(高倉正樹 文・写真)からはじまる3冊のドキュメンタリー絵本は、ありのままの子どもたちの姿をとらえ、たくさんのことを私たちに考えさせてくれます。入園・入学の季節を前に、「仲間とともに過ごすということ」について、考えてみませんか?


アイちゃんの
口ぐせは、「あしたもがんばっていいですか。」

 アイちゃんは、ダウン症です。1年1組の仲間と一緒に学校生活を送るアイちゃんは、みんなより頭ひとつ背が小さいけれど、人なつこくて元気! 授業では「はいっ」と積極的に手をあげます。口ぐせは「あしたもがんばっていいですか。」
 アイちゃんは準備に時間がかかったり、うまくできないこともあるけれど、クラスのみんなは急かしたりしません。先生もなにも言わずに見守っています。

掃除の時間、モップを友だちにぶつけてしまったアイちゃん。ごめんなさい、と声をあげて泣いたあと、先生に、「あしたもがんばっていいですか。」

 あるとき、クラスの友だちが、お母さんにたずねました。「どうしてアイちゃんは、同じ1年生なのにちっちゃいの?」「どうしてみんなと同じことが、できないことがあるの?」お母さんは言いました。「大きくなっていくいきかたは、みんな、ちがうんだよ。アイちゃんは、ゆっくり、ゆっくり、大きくなるの。」「ふうん。」
 
 2年生になりました。アイちゃんが「アイちゃんだから」と特別扱いされることは、もうほとんどありません。ふざけていて、先生に注意されることだってあります。
 上手にできないこともあるし、がんばらなくてはいけないこともまだまだありますが、みんなと同じようにできることも、増えました。


成長する中で、多くを学んでいくアイちゃんと仲間たち


 続編『アイちゃんのいる教室 3年1組』では、アイちゃんを追っていた視点が、クラス全体へと広がります。いつもパワー全開の佐々木先生が担任になり、本は「アイちゃんのいる教室」が主人公となります。
 
 3年1組の子どもたちは、アイちゃんが失敗したときには、優しく注意したり、手を差しのべたりするのに、他の子が同じことをしたら、からかったり、けんかしたり。そんなみんなに先生は、こう問いかけます。
 
「助けあうのは、すてきだけど、アイちゃんだからやさしくするのは、ちがうと思う。それはアイちゃんのためにもならないよ。」
 
「だれだって得意なこと、苦手なことはあるよ。できないことを、どうして、そんな風にからかうの?
アイちゃんにも、うまくできないことがある。でも、みんなは、からかわないでしょう。アイちゃんと、ほかの子と、どうしてちがうの?」
 
 そして、3年1組は1年を通して、「仲間ってなんだろう?」という問いの答えを考えていきます。


 最終巻『アイちゃんのいる教室 6年1組にじ色クラス』では、卒業を間近に控え、より深くこのテーマに向き合って、学級目標でもある「みんな輝け!にじ色に」の「にじ色」について考えます。アイちゃんは、自分がダウン症であることを知り、自分自身についても見つめるようになります。
 
 人によって、できることやできないことがある。気が合う子もいれば、合わない子もいる。仲間って? みんなで作る「にじ色」って?
 教科書には載っていないむずかしい問いに、クラスの全員が真剣にぶつかり、先生の助言を受けながら、最後はそれぞれの答えを出します。本のラストに掲載された、クラスの子どもたち1人1人の深い思考から生まれた言葉には圧倒されます。


親近感を持って読める、あたたかなシリーズ

 シリーズの作者で新聞記者の高倉正樹さんは、仙台市のこの小学校に、6年間通われて取材を続けました。子どものなかに入りこんで撮られた写真と、あたたかなまなざしで書かれた文章は、まるでアイちゃんのいる教室の片隅に、自分が立っているかのような気持ちにさせてくれます。
 
 まっすぐなアイちゃん、しなやかな心をもつ子どもたち、そして、クラスづくりに力強くぶつかる、パワフルな先生の姿には、たくさんの学びがあります。ぜひ、子どもたち、そして大人の方にも読んでいただきたいシリーズです。

この記事に出てきた本

バックナンバー

今日の1さつ

とつぜん魔女が現れていろいろな話を聞かせてくれるということが不思議で一気に読んでしまいました。岡田さんの本は他の本も場所が学校のものが多くていろいろ想像しながら読めるので何度も読みました。(11歳)

pickup

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