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絵本&読み物案内

ダウン症のアイちゃんの学校生活を追う、ドキュメンタリー写真絵本『アイちゃんのいる教室』

2021.03.01

1年1組のアイちゃんは、ダウン症です。でも先生はそのことを、クラスのみんなに説明したことはありません。アイちゃんの学校生活に密着した『アイちゃんのいる教室』(高倉正樹 文・写真)からはじまる3冊のドキュメンタリー絵本は、ありのままの子どもたちの姿をとらえ、たくさんのことを私たちに考えさせてくれます。入園・入学の季節を前に、「仲間とともに過ごすということ」について、考えてみませんか?


アイちゃんの
口ぐせは、「あしたもがんばっていいですか。」

 アイちゃんは、ダウン症です。1年1組の仲間と一緒に学校生活を送るアイちゃんは、みんなより頭ひとつ背が小さいけれど、人なつこくて元気! 授業では「はいっ」と積極的に手をあげます。口ぐせは「あしたもがんばっていいですか。」
 アイちゃんは準備に時間がかかったり、うまくできないこともあるけれど、クラスのみんなは急かしたりしません。先生もなにも言わずに見守っています。

掃除の時間、モップを友だちにぶつけてしまったアイちゃん。ごめんなさい、と声をあげて泣いたあと、先生に、「あしたもがんばっていいですか。」

 あるとき、クラスの友だちが、お母さんにたずねました。「どうしてアイちゃんは、同じ1年生なのにちっちゃいの?」「どうしてみんなと同じことが、できないことがあるの?」お母さんは言いました。「大きくなっていくいきかたは、みんな、ちがうんだよ。アイちゃんは、ゆっくり、ゆっくり、大きくなるの。」「ふうん。」
 
 2年生になりました。アイちゃんが「アイちゃんだから」と特別扱いされることは、もうほとんどありません。ふざけていて、先生に注意されることだってあります。
 上手にできないこともあるし、がんばらなくてはいけないこともまだまだありますが、みんなと同じようにできることも、増えました。


成長する中で、多くを学んでいくアイちゃんと仲間たち


 続編『アイちゃんのいる教室 3年1組』では、アイちゃんを追っていた視点が、クラス全体へと広がります。いつもパワー全開の佐々木先生が担任になり、本は「アイちゃんのいる教室」が主人公となります。
 
 3年1組の子どもたちは、アイちゃんが失敗したときには、優しく注意したり、手を差しのべたりするのに、他の子が同じことをしたら、からかったり、けんかしたり。そんなみんなに先生は、こう問いかけます。
 
「助けあうのは、すてきだけど、アイちゃんだからやさしくするのは、ちがうと思う。それはアイちゃんのためにもならないよ。」
 
「だれだって得意なこと、苦手なことはあるよ。できないことを、どうして、そんな風にからかうの?
アイちゃんにも、うまくできないことがある。でも、みんなは、からかわないでしょう。アイちゃんと、ほかの子と、どうしてちがうの?」
 
 そして、3年1組は1年を通して、「仲間ってなんだろう?」という問いの答えを考えていきます。


 最終巻『アイちゃんのいる教室 6年1組にじ色クラス』では、卒業を間近に控え、より深くこのテーマに向き合って、学級目標でもある「みんな輝け!にじ色に」の「にじ色」について考えます。アイちゃんは、自分がダウン症であることを知り、自分自身についても見つめるようになります。
 
 人によって、できることやできないことがある。気が合う子もいれば、合わない子もいる。仲間って? みんなで作る「にじ色」って?
 教科書には載っていないむずかしい問いに、クラスの全員が真剣にぶつかり、先生の助言を受けながら、最後はそれぞれの答えを出します。本のラストに掲載された、クラスの子どもたち1人1人の深い思考から生まれた言葉には圧倒されます。


親近感を持って読める、あたたかなシリーズ

 シリーズの作者で新聞記者の高倉正樹さんは、仙台市のこの小学校に、6年間通われて取材を続けました。子どものなかに入りこんで撮られた写真と、あたたかなまなざしで書かれた文章は、まるでアイちゃんのいる教室の片隅に、自分が立っているかのような気持ちにさせてくれます。
 
 まっすぐなアイちゃん、しなやかな心をもつ子どもたち、そして、クラスづくりに力強くぶつかる、パワフルな先生の姿には、たくさんの学びがあります。ぜひ、子どもたち、そして大人の方にも読んでいただきたいシリーズです。

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