1973年の刊行以来、ながく愛されているロングセラー絵本のひとつ、『まっくろネリノ』(ヘルガ・ガルラー 作/やがわすみこ 訳)。「それぞれの個性が輝けるところがある」そんなメッセージをわくわくするお話にのせて、届けます。翻訳絵本ならではの意外な色のくみあわせと、黒とのコントラストがうつくしい絵本です。
兄さんを助けなくちゃ! ネリノの得意なことを生かして
ネリノの家族は、お父さん、お母さん、そして4人の兄さん。紫、赤、緑に黄色……兄さんたちはあざやかな色をしていますが、ネリノはまっくろです。
いろんな いろした きれいな にいさんたちは、
ちっとも ぼくと あそんでくれない。
あんまり まっくろだから だめなんだって。
「まだ小さいから」「おもちゃをこわしてしまうから」、年上のが遊んでくれない理由はいろいろありますが、「色のちがい」はどうしたらのりこえられるのでしょうか? ネリノは、きれいな色の花にきいてみますが、よい答えは返ってきません。くすりを飲んだらよいのでしょうか?
ところがあるとき、あまりにきれいな色をしていたので、鳥かごの中にとらわれてしまいました。
どうしたら すくってあげられるだろう––––。
考えたネリノは、名案を思いつきます。まっくろなネリノは、誰にもみつからずに助けられるのです!
悲しみのあとにやってくる明るさ
家族や友だちなど、さまざまな人と出会うなかで、だんだんとわかってくる、周りの人と自分とのちがい。ときに、そのちがいゆえにぶつかったり、仲間はずれにされてしまったり、悲しいできごともあります。それをお互いにのりこえて「それぞれの良さ」を認めることは、そんなに簡単ではありません。けれども、この絵本では「そうありたい」というメッセージを「兄さんの救出劇」というわくわくするストーリーにのせて、押しつけがましくなく伝えています。
そこはかとなく前半も、ネリノが兄さんを救出する後半も、背景は同じ黒と紺色ですが、最後のページにたどりついたときには、読み手の心にはっきりと明るい気持ちが生まれているはずです。
著者のヘルガ・ガルラーはオーストリア出身の画家です。この作品はその第1作で、「オーストリア子どもの本最優秀賞」を受賞しています。アメリカやイタリアにわたり、服飾デザインや室内装飾、アニメーション映画などで活躍したガルラーならではの独特な色づかいも、この絵本を読む者の心につよく印象づける役割を果たしています。
対象は3歳ごろから。ぜひ親子で読んでみてください!