秋に入ると、自然と年のおわりを意識するようになりますね。10月の新刊『雪の花』(セルゲイ・コズロフ 作/オリガ・ファジェーエヴァ 絵/田中友子 文)は大晦日のできごとを描いた、ロシアのお話。セルゲイ・コズロフさんという現代ロシア児童文学を代表する作家の戯曲をもとに、ロシアの画家が、日本オリジナル作品です。寒い冬の夜におきた、ほっと心があたたかくなるお話です。
大晦日の夜、クマくんは雪をたべて寝こんでしまいます
大晦日の夜、モミの木をかざっていた動物たち(ロシアではクリスマスではなく、年末年始にモミの木を飾るのが風習だそうです)。ところが、ろうそくをもってくるはずのくんが、待てど暮らせどやってきません。心配したウサギが様子を見にいくと……クマくんは、雪をたべたせいで高熱をだして寝こんでいました。
診察にきたキツツキ先生は、こういいました。
「こんなに熱が高いんじゃ“雪の花”がないと、たすからんよ。」
雪の花? それはいったい、どんなものなのでしょう?
これをきいたクマくんの親友のハリネズミは、クマくんを助けたい一心で、まだだれも見たことがない幻の花をさがして、雪がつもる森の奥へと出かけていきました。
雪の花はいったいどこに?
「雪の花を知りませんか?」
ハリネズミは、森のなかで出会ったポプラの木や、トネリコの木にきいてみます。けれども、2本の木はこたえを知りませんでした。どんどん雪の小道をすすみ、もうあたりも暗くなってきたころ、ようやくマツのおばさんに幻の花の咲いている場所を教えてもらうことができました。
「わたしから100本目のマツの
そのまたむこうに、ふかいふかいくぼみがある。
そのくぼみのむこうに、きりかぶがあって
きりかぶのそばに、冬もこおらない泉があるのさ。
雪の花はその泉のそこにさいているよ。」
星がチカチカとまたたくなか、やっとのことでハリネズミはその泉にたどりつきます。ところが、手をのばしても、凍るように冷たい水にとびこんでさがしても、雪の花はみあたりません!
やがて、カチコチに凍ってしまったハリネズミ。ハリネズミは無事に家に帰り、クマくんを助けられるのでしょうか。
心をほっとあたためてくれる、ロシアの絵本
2010年に71歳で亡くなったロシアの作家の描いた物語に、30代の若いイラストレータが絵をつけた作品です。美しい冬の森と、あいらしいハリネズミが魅力の親しみやすい絵が、やさしい物語の世界へ誘ってくれます。
すっぽりと深い雪におおわれたロシアの厳しい寒さと、ひとりきりで雪の花をさがすハリネズミの心細さ。それでも必死に雪の花をさがすハリネズミの歩をすすめるのは、「クマくんを助けたい」という、何にも変えられないつよい思い。