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見える子も見えない子も一緒に楽しめる本「点字つきさわる絵本」の魅力

今回のテーマは点字がついた絵本、「点字つきさわる絵本」。ちょっと見慣れない言葉かもしれませんが、実は児童書にかかわる出版社が、大切に出版をつづけているジャンルのひとつです。「見える子も見えない子も一緒に楽しめる本」としての「点字つきさわる絵本」の魅力をご紹介したいと思います。

「点字つきさわる絵本」とは? 

 「点字つきさわる絵本」とは、点字だけでなく、絵の部分も触れるようになっている絵本のことをいいます。目の見えない方にとっては、本はもちろん、絵本もどれもただのツルツルとした紙でしかありません。そこで、文字だけではなく、絵の輪郭も手で触ってわかるようにしているのです。
 これらの絵本は、30年以上前から、ボランティアグループの方たちにより、手作りで作られてきました。市販の絵本に塩ビの透明シートで点字を貼った「てんやく(点訳)絵本」、そして絵の質感を大切に、布や紙などさまざまな素材を厚紙などに貼ってつくった「さわる絵本」があります。

『海をかっとばせ』市販の本に直接点字、塩ビを貼っています(大阪 てんやく絵本ふれあい文庫製作)

『はらぺこあおむし』のさわる絵本。さまざまな素材をつかって絵を表現しています。(東京 むつき会製作)

  今回紹介する「点字つきさわる絵本」は、手作りではなく、隆起印刷で作る市販の絵本です。手作りの場合1つの書名につきつくれる数にも限界があり、また多くの場合「貸出」というかたちで提供されているのですが、団体の方たちと出版社の、多くの子どもたちに同じ絵本を提供できたら、また繰り返し所有して楽しんでほしいという共通の思いで、各出版社が協力しあって、少しずついま刊行数を増やしているところです。
 「隆起印刷」とは、通常の4色のカラー印刷をした絵本のうえに、さらに厚みのあるシルク印刷を施したもので、字のところには点字を、絵のところには絵のかたちにあわせた印刷をしています。長年手作りの点字絵本を作られてきた団体の方や、盲学校の生徒さんたちに助けられながら、よりわかりやすい表現を模索して作っています。
 

偕成社の「点字つきさわる絵本」

 ではさっそく、偕成社から出している「点字つきさわる絵本」をご紹介します!

(1)『これ、なあに?』『ちびまるのぼうけん

 1979年にデンマークで出版された作品の翻訳絵本。『これ、なあに?』はザラザラくんという主人公が、バラバラくん、ツルツルくんなどいろんな友だちと出会っていく、バリエーションにとんだ感触が楽しい絵本です。『ちびまるのぼうけん』は丸、三角、四角のかたちや、それらが整列することで描くかたちを巧みにつかった作品。偕成社がはじめて出版した「点字つきさわる絵本」のシリーズです。
(2)てんじつきさわるえほん ノンタンじどうしゃぶっぶー

 ノンタンが、大好きな赤いじどうしゃをおいかけていく、1歳ごろから楽しめるノンタン絵本。じどうしゃが、くるくるの円や、ジグザグを描いてすすむのを、指でたどっていく楽しさがあります。

 実際の絵では、赤いじどうしゃは縦になったり斜めになったりするのですが、忠実に隆起印刷をすると、目の見えない子がさわったときに同じじどうしゃだと認識しにくくなってしまうので、隆起印刷部分は、常にじどうしゃが横向きになっています。

(3)てんじつきさわるえほん じゃあじゃあびりびり

 「じどうしゃ ぶーぶーぶーぶー」「いぬ わんわんわんわんわん」など、あかちゃんの身近にある物と音を文字と絵であらわしたシンプルな構成で、ファーストブックの定番として人気のある絵本。人気の絵本だからこそ、見えない子にも一緒にこの楽しさを味わってほしい!という気持ちで、「点字つきさわる絵本」の次の作品に選ばれました。
 同じイラストでも、場所によってツルツル、ザラザラ、ボコボコ……など、さまざまな感触を楽しめるようにしたり、たとえば犬の絵では、足が重なっていると4本とわかりにくいので、隆起印刷部分は4本の足を離したりと、たくさんの方たちのアドバイスから工夫をとりいれています。

 とりわけこの絵本では、色をイメージすることで、より絵本の世界が広がる特徴があるので、原文にはない色についての説明を左上に点字でいれています(例:こんいろのはいけいに きいろいじゃぐち)。

見える子も見えない子もいっしょに!

 「点字つきさわる絵本」と聞くと、点字はわからないし、見えない人だけのものだろう、と思いがちです。でも、見える子どもたちにとっても「さわる」ということは多くのことを感じさせてくれるもの! 目の見えない子と見える子が、一冊の絵本を一緒に楽しむことができる、豊かな可能性を秘めた絵本なのです。
 
 実はこれら市販の「点字つきさわる絵本」が生まれた背景には、先に手作り絵本でも紹介した「大阪 てんやく絵本ふれあい文庫」の代表の岩田美津子さんの呼びかけにより2002年に発足した、「点字つき絵本の出版と普及を考える会」の存在があります。出版社、印刷会社、盲支援学校の先生、書店員などさまざまなメンバーから成るこの会で、製作に関する情報を交換できたことで、市販の作品を比較的安価で刊行する道筋ができたのです。偕成社だけではなく、この会に参加している他の出版社からも、あたらしいアイデアをとりいれたたのしい「点字つきさわる絵本」が出版されているんですよ。
 
 くわしいこの会のあゆみや、他の出版社から出ている本の一覧は、点字つき絵本の出版と普及を考える会」のホームページでご覧いただけます。 

「点字つきさわる絵本」はどこで買えるの?

 「点字つきさわる絵本」は、一般の書店に常に流通しているものではありませんが、出版社から取り寄せることができますので、ぜひ書店の店頭できいてみてください。

点字つき絵本の常備店

教文館ナルニア国

ジュンク堂書店池袋本店

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ぼくはびりになるのは悪いことではないなと思いました。なぜなら、一見びりは成績が落ちるので悪いことだと思っていたのですが、もしびりになっても、そこからがんばれば一番になれると思ったからです。最後の運動会のリレーで、始めがアンカーになり、一生けん命走って一等になったことがすごいなと思いました。(11歳)

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