「きっとこの中に、運命の子がいるはず!」そんな密かな期待をこめて、たったひとつのぬいぐるみを探した経験、多くの方があるのではないでしょうか。今週ご紹介する『くまのコールテンくん』(ドン・フリーマン/作 まつおかきょうこ/訳)は、くまのぬいぐるみと女の子のあたたかな出会いと再会を描いた絵本です。
コールテンくんと女の子、最初の出会い
緑色のズボンをはいたくまのコールテンくんは、大きなデパートのおもちゃ売り場にいます。そこにはコールテンくんのほかにも大小たくさんのぬいぐるみがいるので、小さなコールテンくんに気がついてくれる人は長い間、誰もいませんでした。
けれどもある朝、1人の女の子がコールテンくんのところへ来て、こんなうれしいことを言ってくれたのです。
「ねえ、みて、ママ! あたし、ずっとまえから こんな くまが ほしかったの。」
ところが、おかあさんはコールテンくんのつりひものボタンが1つとれているのをみて、「これ、しんぴんじゃないみたい。」と、女の子を連れていってしまいました。
ボタンを探しにいこう! 真夜中のデパートを大冒険
かなしく2人を見送ったコールテンくん。
「ぼく、ボタンがとれているの しらなかった。こんや さがしに いこう。」
その夜、コールテンくんはそうっと棚からおりて、どこかにボタンが落ちていないかと、あたりを探しはじめました。やがてたどりついたのは、ベッドやソファがならぶ家具コーナー。そして、そこでみつけたのです。ベッドの上に、目的のものが規則正しく並んでいるのを!
「なあんだ、ぼくのボタン、こんなところに あった!」
ところが、マットレスに縫いこまれたそのボタンは、小さなコールテンくんがいくらひっぱってもなかなかとれません。やがてボタンの糸が切れた反動で、コールテンくんもベッドから落ちてしまいました。
にみつかり、あっさりと、元の棚に連れ戻されてしまいます。
女の子がまた会いに来てくれた!
片方のボタンはやっぱりないまま、昨日の朝と変わらずにぬいぐるみの棚に座っていたコールテンくんでしたが、目をさますと、コールテンくんの前に、昨日きた女の子が立っていました。リサという名のその子は、自分の貯金でコールテンくんを買えることを知り、迎えにくれたのでした!
出会いを待っているのは、わたしたちだけではなくて、ぬいぐるみたちもなんだ! といううれしさや、夜中にぬいぐるみが動きだすというわくわくした展開、そして一晩たってまた会いにきてくれた女の子の、コールテンくんへの本物の愛情。絵本を開いてから閉じるまで、読者の心をつかんではなさない、あたたかな絵本です。
あなたと、大切にしているぬいぐるみの間にはどんなストーリーがあるでしょうか? そんなことも思い出しながら、親子で読んでいただきたい1冊です。