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作家が語る「わたしの新刊」

前からとうしろから、2つのお話を楽しめる!『うみへ やまへ』三浦太郎さんインタビュー

2024年、絵本作家デビュー20周年を迎えられた、三浦太郎さん。その三浦さんが50作目の絵本として描いたのが、『うみへ やまへ』です。前から読むと、主人公が「うみへ」むかうお話。うしろから読むと、もうひとりの主人公が「やまへ」むかうお話が楽しめます。この作品について、作者の三浦太郎さんにお話を伺いました!

表紙には「うみへ」のタイトル

本をひっくりかえすと「やまへ」のタイトル

前からもうしろからも読める絵本作品をつくられたのは初めてだと思いますが、どのようにお話のアイディアを組み立てられたのでしょうか。

この絵本のタネを思いついたのは、だいぶ前のことになります。いちばん古いデータは2017年の11月で、仮のタイトルを『くるまくるまくるま』とつけています。

アイディアを練っていくうちに、これはうしろからも読める絵本になるのではないかと気がつきました。2021年ごろ、『うみへ やまへ』というタイトルが決まり、前後の日記のページもついて、急速に内容がまとまったのを覚えています。

『うみへ やまへ』という絵本でやりたかったのは、山に降った一滴の雨の雫が海まではるばる流れていくような普遍的なイメージに、ロードムービーのような、どこのうちにもありそうな帰省のお話をのせること。

絵をあえて大人っぽく仕上げたので、描くのはとても楽しかった。

絵はどのように描かれましたか?

鉛筆で描いたラフスケッチからパソコンのソフトIllustratorで絵を起こしたあと、Photoshopで色ごとに版を分けます。各色の版をモノクロでプリントして、それをさらにスキャンします。またPhotoshopに戻して色をつけ、液晶ペンタブレットで加筆していきます。このままではフラットなベタ面になってしまうので、ペイントローラーを使ったオリジナルのテクスチャを加え、ざらっとした質感を出します。これに、版画のようなインクの重なりと、版ズレの効果を出して、完成です。

このやり方は、学生時代に専攻していたシルクスクリーンをパソコンで擬似的に再現しているもので、決して難しい技術ではありません。タブレットなどでもできるので、興味がある方は試してみてはいかがでしょうか?

「うみへ」の主人公にとっては「おおきなえき」も、「やまへ」の主人公がみると「いなかのえき」だったり、見なれた場所が遠くからきた子にとっては新鮮な風景だったり。同じ風景でも、人によって見え方がちがうのがおもしろいですね。

そうですね、旅をしていると、人は世界中どこにでも住んでいて感心させられます。昔話の海彦山彦ではないですが、山に暮らす者が海へ向かう目線だけでは、一方通行でイメージが広がらないので、うしろからも読めるようにしたというわけです。住んでいる場所で価値観が異なることはよくありますよね。できるだけ、うみの子とやまの子の感じ方の違いを出すように工夫しました。

つぎつぎ変わっていく景色をながめるのはドライブの楽しいところですが、絵本でも同じようにその体験を味わえました。三浦さんはドライブがお好きなお子さんでしたか?

今でも、小さいころに家族で車旅行したことをよく思い出します。愛知県出身なので、伊勢や神戸への旅行はとても楽しかったいい思い出です。旅につかう車は、実家の本屋でつかっている仕事用のライトバンでした。自家用車もあったのですが、あんまり乗らないのでいつもバッテリーが上がっていました。ぼくもライトバンの方が好きで、父は配達や荷物運び、洗車によく誘ってくれたものです。今ぼくが乗っているのもワゴン車です。

本作の背景には音楽の存在があるとうかがいました。

最初にイメージしたのは、ハイ・ファイ・セットの『水色のワゴン』。この曲は高校一年の時に買ったLPに入っていた思い出の曲です。近年自分のなかで人気が再燃しているシティポップには車が出てくる曲が多いので、あげればキリがありません! 

仕事をしている時はずっと音楽を聴いているので、音楽からイメージをふくらませることは多いです。この絵本もレコードのように、A面B面ならぬ両A面です。ぜひ、ひっくり返してお楽しみください。

この絵本を読んだ人は、どんなドライブソングが頭に浮かぶのかな?

デビューされて20周年、本作が50作目の作品とのことですが、特別な思い入れはありますか?

少し前から50作目はこの本と決めていました。完成して、ちょっと早く還暦を迎えた感覚です。リボーンとでもいいましょうか、また絵本を作りはじめたころの気分が戻ってきました。

では、これからどんな絵本を作っていきたいですか?

これまではまだ若かったせいか、絵本を型にはめがちでした。最近は少し肩の力がぬけて、自由に取り組めるようになってきたなと感じています。まだまだ出していないアイディアもありますし、試してみたいタッチもあります。「三浦太郎がまた変な絵本出したぞ!」といわれるようにがんばりたいです。


三浦太郎 
1968年愛知県生まれ。大阪芸術大学美術学科卒業。ボローニャ国際絵本原画展入選。『ちいさなおうさま』で第58回産経児童出版文化賞美術賞を受賞。『くっついた』、『よいしょ』『とどくかな』『まかせとけ』(はたらくくるまシリーズ)『でんしゃがきました』『ジャングルジムをつくろう!』『おはなをどうぞ』『みち』『のりもの のーせてのせて』など、作品多数。

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今日の1さつ

出産祝いでいただきました。何度も母に読んでもらった本、自分が妹に読んであげた本。とても懐かしい気持ちになりました。同じ本を娘に読んであげられることを喜ばしく思います。娘がいつか子どもを産むことがあったら、またその子に繋げていきたいと思ってもらえるよう、たくさん読んであげたいです。(0歳・お母さまより)

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