子どもの本の作家の方に「こどもとのあそび」を教えてもらう連載。第10回目は、2人組の画家、絵本作家ユニット、ザ・キャビンカンパニーさん。地元大分県を拠点に、全国のギャラリーやショップでの展覧会や、絵本制作、ワークショップ等、さまざまな分野で幅広く活動するご夫婦です! 5月に新刊『あかんぼっかん』の発売をひかえているおふたりに、身近な「ダンボール」でのものづくりの魅力を教えてもらいました。
おうちにダンボールはあるかな? 私たちはよく美術館や図書館でのイベントに呼ばれて、子どもたちといっしょに、ものづくりをして遊ぶことが多いのだけれど、そのときに強い味方になるのが、ダンボールなのだ。切ったり、ねじったり、穴をあけたり…… 固さがあって丈夫なのに、子どもの力でも、自由自在に変形ができる。これまでいろんな遊びをやってきたので、少し紹介するね。
まずは、ハロウィンのおばけ仮面作り。頭に入りそうなサイズのダンボール箱をひっくり返して穴を開けたら、あっという間に仮面の土台のできあがり。その土台にみんなで色を塗ったり、物を貼ったりして、おばけの仮面を作っていくよ。
この子は、ほそ〜く切ったダンボールをトゲトゲに重ねて貼りつけているね。毛糸や綿もくっつけて、まるで怪獣みたい。仮面が完成したあとは、みんなで「おばけにへ〜んしん!」商店街をねり歩き「トリックオアトリート!」と、お菓子をもらいにいきました。
お次は、宇宙人図鑑作り。大きなダンボール板を半分に折ると、図鑑のページのできあがり。左側には「なまえ」「すんでいるほし」「すきなたべもの」「とくちょう」など宇宙人の設定を。右側にはその宇宙人の姿形を。これまた、色を塗ったり、物を貼ったりして、1人が1画面を担当して作っていくよ。
この子の作った宇宙人は「ごみばこ星人」。住んでいる星は「そうじ星」。好きな食べものは「わたぼこり」だって! うちの家のほこりも食べてほしい〜。わたぼこりは本物の綿で作ってあるよ。今にも画面から飛び出してきそうなユニークな宇宙人だね! 最後は、全てのページを合体させて大きな図鑑のできあがり。こんな大きな本はダンボールじゃないとなかなか作れない。できあがった図鑑を使って、みんなで読み聞かせ会もやったよ!
こんな感じで、いつも私たちは子どもたちといっしょにダンボールを使って遊んでいるよ。絵を描いたり、物を作ったりするのが苦手だという子も、こういった遊びかただと、正解がないので、気楽に作れると思うのだ。ていねいに色を塗っていく子、激しく色を塗っていく子、色は塗らず綿で全体を埋めつくす子、作品の設定を凝っていく子。大切なのは、その子が一生懸命やっているのはどこなのかをちゃんと見つけてあげて、しっかりほめること。
そうすることで、子どもたちはやる気が湧いて、どんどん楽しくなってくる。ついつい大人はきれいにその物そっくりに作ることだけが正しいと思いがち。美術には、いろんな方法があって、それぞれ良さが違うので、ダンボール遊びを通して、なるべくたくさんの子に美術を好きになってほしいなと思う。
では、ここからは、今まで私たちが、子どもたちといっしょにつちかってきたダンボール工作術を伝授するよ。応用していろんなダンボール作品を作っちゃおう!
【術①:土台を作ろう】
四角柱、三角錐、円柱。たいがいの形はこの3パターンの組み合わせで作れるよ。帽子や、家の屋根など、作品の土台に使ってみよう。表面にカッターで軽く切れ線を入れることで曲げやすくなるのだ!
【術②:飾りパーツを作ろう】
色つきダンボールを、こまかく切るとあざやかタイルのできあがり。ダンボールのうす皮をやぶくと波なみ模様が顔を出す。ほそ~く切ると、うどんみたい? 動物の毛にも見えてきた! 魚のウロコや鳥の羽、ダンボールはいろんなパーツに変身できるのだ!
【術③:くっつけよう】
ダンボールは紙なので、木工用ボンドでさまざまな材料がくっつくよ。毛糸、布、折り紙、トイレットペーパーの芯、綿、紙コップ……ペタペタくっつけてダンボールをいろどり豊かに飾りつけよう!
【 術④:色を塗ろう】
絵の具やマジック、クレヨンなどで、色も塗れちゃうよ! べったり塗ったり、うす~く塗ったり、いろんな塗りかたを試してみよう!
4つの術を組み合わせると、いろんなダンボール作品が作れちゃう! コツコツ頑張っていくと、こ〜んな大きなものも!!
ダンボールは、お手軽なのに奥が深い! 子どもたちと遊んでいると「そんな使いかたがあったのか!」という発見があって、毎回びっくりしちゃう。これは、最近うちの子ども(1歳)といっしょに作ったダンボールハウス。マジックやテープを使ってかわいく装飾中。これから、どんどん改造していく予定!
大人も子どももいっしょになって楽しめるダンボール遊び。みなさんも、 ぜひやってみてね!
ザ・キャビンカンパニー
阿部健太朗・吉岡紗希夫婦による絵本作家ユニット。1989年大分県生まれ。大分大学教育福祉科学部卒業後、地元大分県を拠点に、全国のギャラリーやショップにて展覧会、絵本やイラスト、ワークショップ等、様々な分野で幅広く活動している。TURNER AWARD2010未来賞、第7回日本童画大賞準優秀賞受賞。現在、廃校となった小学校をアトリエに改装して日々制作中。おもな絵本に『よるです』『ハテナはかせのへんてこいきものずかん』『あかんぼっかん』(いずれも偕成社)、『だいおういかのいかたろう』(鈴木出版/2015年日本絵本賞読者賞)、『しんごうきピコリ』(あかね書房/2018年日本絵本賞読者賞)、『ボンボとヤージュ』(学研プラス)、『ほーほー』(小学館)などがある。
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