子どもの本の作家の方に「こどもとのあそび」を教えてもらう連載。第11回目は、「ミルキー杉山のあなたも名探偵」の著者、杉山亮さんです! 元々保父をされていた杉山さんには、遊びの引き出しがいっぱい。身近な積み木をつかった、あっと驚く遊び方(積み方)を教えてもらいました。
今は児童書を書いたり、ストーリーテリングをして暮らしているけれど、学校を出てすぐになったのは保父だった。
保育園には積み木があって毎日のように子どもたちと、大作に挑戦していた。
まだじょうずに積めない小さい子が積み木をままごとのおかずにしようとお皿に載せたりすると、大きい子が「こら、たりなくなるとこまるんだ」とおこった。
本気でおもしろがっていたのだ。
先日、幼稚園の若い先生相手に積み木遊びの講師をした。
積木には多様な積み方がある。
知らないと四角にしか積めないが、実は三角屋根も丸い塔も作れる。
子どもとつきあう大人がそれを知っているかどうか、そのテクニックを子どもの前でやってみせられるかどうかで、子どもと積み木の付き合い方が全然違ってくる。
サンプルがないまま、ただ、「自由に積めばいいんだよ」と言ったところで、子どもは高く積むか、長く並べるかくらいしか思いつかない。
大人が、子どもが(いいなあ、すごいなあ)と思うようなものを作ってみせ、それを見た子どもがあこがれてやってみようと模倣することで技術は受け渡される。
そして、その技術を得れば、子どもたちはもっと上のレベルで自由に作れるようになるのだ。
そこで講習会では先生たちに積み木を配り、いろいろな積み方を試してもらう。
中には「自分が子どもの頃、積み木で遊んだことがない」という先生もいて、技術以前にまず、先生たちに「積み木はおもしろい」と思ってもらうところから始めなければならない。
でも、講習を始めると必ずみんな夢中になって時がたつのを忘れ、最後に全員でお城を作る頃には「うちの園にも積み木がほしい」と言いだしたりする。
大人の心のまんなかにふだんは眠っている子ども的な自分が、ざわめきだすのだと思う。
今も昔も積木の底力を感じるあたりだ。
杉山 亮
1954年東京生まれ。保父として、各地の保育園などに勤務。その後、手作りおもちゃ屋<なぞなぞ工房>を主催。中川大輔画伯との、「ミルキー杉山のあなたも名探偵」シリーズは『もしかしたら名探偵』『いつのまにか名探偵』『あしたからは名探偵』『事件だよ!全員集合』など20作品を数える。小淵沢在住。
● 杉山亮のなぞなぞ工房 http://sugiyama-akira.jp/