子どもの本の作家の方に「こどもとのあそび」を教えてもらう連載。第12回目は、『ガンバレ!! まけるな!! ナメクジくん』など、生き物たちを主人公にしたユニークな絵本を多く描いている三輪一雄さんです! ライフワークとしているビーチコーミングで、知識絵本『ぼくたちいそはまたんていだん』の著作もある三輪さんが、海に行けばすぐに挑戦できる、ビーチコーミングの魅力を教えてくれました。
ビーチコーミングって聞いたことあるかな?
ビーチコーミング(Beach combing)とは、海岸(beach)をクマデのような道具でかく(combing)ということ。つまり、海岸などに打ち上げられた漂着物を収集したり観察することです。「漂着物さがし」もしくは「海からの贈りものさがし」ということですね。
ビーチコーミングでは、貝ガラやウニのカラ、サメの歯など、海洋生物の遺物の収集や、潮流によってやってくる植物のタネ(種)の収集、あるいは陶器のかけら、すりへったガラスなどのシーグラスの収集など、集める対象はさまざまです。ビーチコマーたち(漂着物探しをする人たち)はそれぞれ好みのものを探しています。
今回は貝、とくに「タカラガイ探し」を紹介したいと思います。
タカラガイは知ってますか? 海にいくと、おみやげ屋さんなどで売られている、こんもりとしたツルピカの貝殻です。タカラガイは巻貝の仲間で日本には約90種類のタカラガイがいて、多くは磯に生息しています。
磯にやって来ました。
潮だまりにはアメフラシやヤツデヒトデがいます。
おっ、さっそく浜辺に打ち上がったタカラガイを発見。
これは「ホシキヌタ」というタカラガイです。でもカラがツルピカではないですね。海底の砂利浜を転がりつづけて、こすれてこんなふうになってしまったのでしょう。
ツルピカのタカラガイを見つけるには、大潮の干潮時がねらい目です。大きく潮が引いた磯で、岩場のすき間や下あたりなど、あまり波や潮流の影響を受けない場所をさがすと、見つかります。潮だまりも潮流を受けないのでいいと思います。
ほら、岩の下に、ツルピカのホシキヌタがありました。
運がよければ生きたタカラガイにめぐり会うこともあります。
(右上が生ホシキヌタ、右下が生キイロダカラ)
数時間の採集でたくさんのタカラガイが見つかりました。
(ホシキヌタ、ヤクシマダカラ、キイロダカラ、ハナビラダカラなど)
採集したタカラガイは家に持ち帰って、水道水に3時間ほどつけて塩抜きをします。時間がたったら水から出して新聞紙やキッチンペーパーをしいたトレイにのせ、陰干しで乾燥させます。
貝ガラが十分乾燥したら標本カードを作ります。本やネットで種名を調べて採集日と産地、殻の大きさなどを記入し、100円ショップで売られているケースに貝ガラといっしょに入れます。
どうです? 研究者の標本みたいでしょ。
タカラガイ以外の貝ガラでも同じです。浜辺にはたくさんの貝ガラが打ち上がっています。こんな巻き貝も! 左がネジガイ、右はオダマキです。さがすと小さな貝やウニのカラがたくさん集まります。これらも水道水に数時間つけて塩抜きをし、陰干しで乾燥させます。ただこのような小さな貝ガラひとつひとつに標本カードを作るのは大変なので、まとめて保管しておきましょう。
あ、砂浜でタツノオトシゴの死がいを見つけました。この場合も水道水に数時間ひたして塩抜きをし、陰干しで乾燥させます。ただし魚は貝ガラと違ってカビが生えるおそれがあるので、よ〜くよ〜く乾燥させてから標本ケースに入れて下さい。
こういう標本をいくつか作れば夏休みの自由研究はバッチリ。「標本作り」というとすぐに昆虫の標本を思いますが、虫を殺すのがいやな子や虫が苦手な子にとっては、貝ガラなどの海の生きものの標本は、うってつけだと思います。
三輪一雄
1959年大阪生まれ。東京造形大学絵画科卒業。著書に『アンモナイトは“神の石”』、『ガンバレ!! まけるな!! ナメクジくん』『イボイボガエル ヒキガエル』『のんびりオウムガイとせっかちアンモナイト』『ぐるぐるうずまき』『ぼくたちいそはまたんていだん』、『石の中のうずまきアンモナイト』『カタツムリにげた』、『なっとうくん西へいく』などがある。ライフワークは化石採集、ビーチコーミング、抜け殻集め。