古代エジプトの王の墓、ピラミッド。その巨大さや、建築技術の高さ、ミイラや宝石など内部に納められたものたちのおもしろさに、誰もが一度は心をとらえられますよね。本書は『からすのパンやさん』などで知られる絵本作家のかこさとしさんが、専門家の監修のもとに「ピラミッド」の思想や科学、歴史を紹介する知識絵本です。
ピラミッド3000年の歴史を網羅的に解説!
小学校中学年以上向け*に書かれた本書は、古代エジプトで3000年の間、姿や役割を変えながらつくられていた巨大建築の墓・ピラミッドについて、豊富なイラストと誰にでもわかりやすい文章で紹介する1冊です。
*ふりがなは全ての漢字にふってあります
ピラミッドを知るためには、その巨大さや形の不思議さ、内部のおもしろさだけに着目しても、理解はできません。3000年の歴史を知る、とはつまり、ピラミッドがつくられた古代エジプトの歴史、政治、地理、宗教、などを総合的に知ることでもあります。
あとがきで、作者のかこさとしさんは「土木・建築・彫刻・美術はもちろん、宗教・経済・地理・気象などを含めた総合的な、真正面からの接近と描写に努力した」と書いており、ピラミッドの歴史とともにあるこれらの背景が、ぎゅっとつまっています。
俯瞰的に物事をみるための工夫が満載
絵本では、まず、ピラミッドがつくられるに至った古代エジプト人の死生観の解説からはじまり、巨大な建築物を正確につくるために使われた技術や道具の紹介、各時代の王政の様子、そして、それぞれの王の墓であるピラミッドを解説します。
世界最大のピラミッドであるクフ王の墓や、手付かずの状態で残されていたツタンカーメンの墓を、内部まで具体的に紹介することもあれば、ときに広い地図で、すべてのピラミッドの位置を示すこともあります。あるいは、それぞれの王の功績を紹介することもあれば、王国全体の組織表までイラストで解説することも。
部分と全体をイラストと文章で解説することで、俯瞰的に物事をとらえながら、中心にあるピラミッドの謎を理解するため、さまざま工夫をこらしています。ものごとを多面的に見ることが必要といつも論じてきた、かこさんならではの、描き方です。
テレビで大々的にその謎が特集されることの多いピラミッドですが、この1冊を読むと、そこここで聞きかじったちらばった知識が、頭の中でうつくしく整理されることでしょう。ピラミッドに興味をもった子どもはもちろん、大人にもおすすめしたい知識絵本です。