愛犬と過ごす、ちょっぴり奇妙な夏の1日を描いた絵本『ジローとぼく』(大島妙子 作・絵)をご紹介します。
愛犬ジローとぼくが入れ替わってしまって……?!
ジローとぼくは、毎晩いっしょの布団で寝ています。子犬のころは小さくて、ぼくの腕の中にすっぽりと収まっていたジローですが……どんどん、どんどん大きくなりました!
ある日、成長したジローのために、お父さんとぼくは犬小屋をつくってやりました。
ジローが犬小屋で寝るはじめての夜。庭から響く「ウォーン」「ウォーン」という悲しそうな声にたまらなくなったぼくは、ジローといっしょに犬小屋で寝ることにしました。
「きょうだけだぞ きょうだけ ここで ねてあげるけど、あしたからは ひとりだよ」ジローにそう言い聞かせたぼくは、いつの間にかぐっすり眠ってしまい……。
朝。目を覚ますと、ぼくはびっくりしました! なんたって、ジローがぼくの服を着て、食卓について朝ごはんを食べているんですから。「どうしてだか わからないけど、ぼくが ジローで ジローが ぼくに なったのだ」!
ジローは何食わぬ顔で、ぼくの代わりに学校の宿題をしたり、妹といっしょに遊んでやったり、おばあちゃんの肩たたきをしたり。ぼくがいつも面倒くさがっていたことをやっているジローは、なんだかうれしそうです。一方のぼくも、自由きままな犬の暮らしを満喫して……。
ふしぎと懐かしい、家族の風景
大島妙子さんは『たなかさんちのおひっこし』『ケンケンとびのけんちゃん』『タマミちゃんハーイ!』『ぼくんちどうぶつえん』「オニのサラリーマン」シリーズなどで知られる絵本作家。どこか懐かしさのある温かな絵と、ユーモラスなお話が多くのファンを生んでいます。
縁側やちゃぶ台がある居間、吹き流しがついている扇風機、ビール片手に野球観戦をするお父さん、3世代での同居……。実際に体験したことはなくとも「懐かしい」と感じる家族の風景が描かれる本作。ぜひご一読ください。