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絵本の相談室

保育士が答える! 0123歳のちょっとしたお悩み 第11回

子どもに絵の描きかたを教えた方がいいですか?

小さい子たちの絵については、保育園でも考え方は多様です。

上手だとか下手だとか、描いた絵の評価をされる前に、たくさんの「なぐりがき」をさせてあげたい、というのがわたしの経験からの思いです。

保育園の1歳クラスで大きな紙に絵を描こうと考え、子どもたちのためににぎって描ける水性ペンを用意したときのこと。子どもたちは興味しんしんで集まってきて、ペンを手にとりました。

しかし、絵を描きはじめたのは数人。においをかいで、ポイッと投げてしまったり、手についた色を見て泣き出してしまったり、ふたをはめたり外したりする遊びを楽しみはじめたり……。子どもって保育者の意図どおりにはならないなあと実感しました。

それでも、だんだん絵を描くことが楽しみになってきます。

小さい子は、肩を軸にして絵を描くので、なるべく大きい紙を用意するのが良いと思います。特に家庭では、テーブルや壁に描いたりするんじゃないかと心配だと思いますが、大きい紙なら大丈夫。包装紙やカレンダーの裏などが活用できます。

最近では、ふけばさっと消えるクレヨンや、窓にも描けるクレヨンなども売られていて、保育園でも窓をキャンパスにできるタイプのものをよく活用しています。

子どもの絵の発達には道筋があるようです。

乳幼児期の子どもたちの絵は「表現」ととらえています。好きにのびのびと描いている姿を見ていると、1歳ごろは左右に手を動かしたり、点てんをつけたりするだけだったのが、月齢がすすむにつれ、ぐるぐると丸を描く、丸が閉じる、描いたものに意味づけをする……という具合に、変化していきます。子どもの絵の発達には道筋があるようです。

子どもたちが何かを描いていると、つい「おめめは?」「お口はないの?」「体もあるよ」と口をだしてしまいがちですが、楽しく描いているようなら、発達の道筋の過程と考えるのが良いと思います。

そんな中で「かいて!」とせがまれることもでてきます。

1、2歳の子は、おとなに描いてもらうことをとても喜びますが、おとなが描きはじめると、自分で描くのをパタリとやめてしまいます。紙の上に描かれたおとなの絵と、それまで自分が思いのままに描いてきた絵が、「違うものだ」「自分には描けないものだ」と感じて、やめてしまうようです。

また、アニメなどのキャラクターを描くことは、描かれた絵から子どもたちが想像を広げる余地が少ないので、園の先生たちには「アニメのキャラクターなどを描かない方が良い」と伝えています。

何を楽しんで描いているのかなあ? と、子どもの姿を観察してみてください。なにか発見があるかもしれません。

子どもたちは「おもしろい!」「楽しい!」と感じたときにグン!と大きくなる。

園によっては、おもいっきり絵の具遊びをしたり、絵だけではなく、水遊びやねんど遊びなど、子どもたちが表現したり、感じたり、考えたりすることを大事にしているところもあります。

絵を描くことに興味を示さない子もいるかもしれませんが、あわてず、あせらずが大事ですね。そして、たくさんの絵本を目にしていると、色や形、文字などへの興味は、知らず知らずのうちにつちかわれていくのではないかと思っています。

何かを伝えたり教えたりするためではなく、楽しく絵本を見る時間を親子で過ごしてください。
子どもたちは「おもしろい!」「楽しい!」と感じたときにグン!と大きくなる気がしています。

絵を描くことや表現をテーマにした絵本。

『えをかくかくかく』(エリック・カール・作、アーサー・ビナード・訳、偕成社)

この絵本には「あおい うま」や「あかい わに」、「きいろい うし」、そして「みずたまもようの ろば」が登場します。常識にとらわれず、自由に描いていいということを教えてくれます。一方で、美術館や絵本、画集などで芸術に触れることも大切だとエリック・カールさんはこの本のプロモーションビデオの中で語っています。子どもたちにこの本を読んでも「こんな色の動物いないよね!」と言われることはありません。素直に受け入れて見ています。エリック・カールさんが言うように、子どもたちが想像する世界を応援してくれているのだと思います。

『こんにちは! わたしのえ』(はたこうしろう・作、ほるぷ出版)

これまでわたしは、園の子どもたちと、大きな紙に思いっきり絵を描く活動をしてきました。絵の具だらけになって、思う存分に遊ぶときの子どもたちの表情はとてもステキで、何かを描くという目的はないのに、できあがるとまさにアート! その活動のおもしろさが絵本になっている! と、うれしくなって購入したのがこの絵本です。本の中で女の子が感じている世界をどの子にも体験させてあげたいなと思います。

『おそばおばけ』(谷川俊太郎・文、しりあがり寿・絵、クレヨンハウス)

谷川俊太郎さんが「せん」というテーマを出して、できあがっていったという本。一筆書きで描かれた自由な線が、なぜか「おそば」。この自由な線と短い言葉に、3、4歳の子どもたちは声を出して笑います。この自由な線が、子どもたちの興味を引くところがおもしろい! と思う。これまで、ぐちゃぐちゃとなぐり描きをして、それを「ラーメン」とか「うどん」と意味づけする子どもたちと出会ってきました。描いたものを何かに見立てて遊ぶ子どもたちにぴったりの、ユーモア、ナンセンス絵本です。赤ちゃんから楽しめます。

『ぼくのくれよん』(長新太・作絵、講談社)

長新太さんのこの絵本を何度も子どもたちと読んできました。ぞうが大きなクレヨンを持って描く。「びゅー びゅー」と描く。ただ「びゅー びゅー」描いているだけなのに、「いけ」や「かじ」や「ばなな」になっていく。子どもたちは、クレヨンでごしごし描くのも好き。描いたものをぬりつぶす必要はないのだけれど、「びゅー びゅー かく」勢いはおもしろい。最後は3本のクレヨンを持って、にじのような絵を描くぞう。この本を読むと、おとなでもクレヨンで絵を描いてみたくなるはずです!


安井素子(保育士)
愛知県に生まれる。1980年より公立保育園の保育士として勤める。保育士歴は、40年以上。1997年から4年間、月刊誌「クーヨン」(クレヨンハウス)に、子どもたちとの日々をつづる。保育園長・児童センター館長を経て、現在は中部大学で非常勤講師として保育と絵本についての授業を担当。保育者向け講演会の講師や保育アドバイザーとしても活動している。書籍に『子どもが教えてくれました ほんとうの本のおもしろさ』(偕成社)、『0.1.2歳児 毎日できるふだんあそび100ーあそびに夢中になる子どもと出会おう』(共著、学研プラス)がある。月刊誌「あそびと環境0・1・2歳」(学研)、ウェブサイト「保育士さんの絵本ノート」(パルシステム)、季刊誌「音のゆうびん」(カワイ音楽教室)で連載中。

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