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いつもひとりぼっちの男の子と、ある先生の出会いを描く『からすたろう』

長いお休み明けは、学校に行きたくない、と憂鬱な気持ちで朝を迎える子どもたちもいるかもしれません。今回ご紹介する『からすたろう』(やしま たろう 文・絵)は、クラスになじめずいつもひとりぼっちの男の子と、ある先生との出会いのお話です。

ひとりぼっちでも楽しいことを見つけるのが得意な「ちび」

 みんなが村の学校にあがったはじめての日、ある男の子が教室からいなくなりました。その子は、床下の暗いところに隠れていました。だれもその子のことを知らず、背が小さかったので、ちびと呼ばれるようになりました。

  ちびは、先生を怖がってなにひとつ覚えることができず、クラスの子どもたちともちっとも友だちになれません。いつもひとり、のけものにされていました。

 そのうち、ちびは、やぶにらみ(寄り目)の目つきをするようになりました。見たくないものを見ないようにするためです。

 みんなはちびのことを「うすのろ」とか「とんま」と呼びました。しかし、ちびは来る日も来る日も、欠かさずに学校にやってきました。ひとりぼっちの時間が長いちびは、退屈しないで楽しむやりかたを見つけるのが得意でした。たとえば教室では、天井や、友だちが着ている服のつぎはぎ、窓の外の景色などをながめて過ごしました。校庭では、目を閉じて遠くの音に耳をすませたり、虫をつかまえて観察しました。

いそべ先生との出会い

 そんなちびのよいところをいち早く見つけてくれたのが、6年生の担任になったいそべ先生でした。先生は、ちびが野ブドウや山イモがあるところをよく知っていたり、花にくわしかったりすることに、いたく感心しました。ときどき先生は、まわりに誰もいないとき、ちびとふたりで話をすることもありました。

 その年の学芸会で、ちびが舞台に立ったとき、誰もが目をみはりました。「あのあほうが、あんなところでなにをするのかい?」

 ちびがそこで披露したのは、「烏のなきごえ」でした。かえったばかりの赤ちゃんカラス、母さんカラス、父さんカラス……おしまいに、1本の古い木にとまっているカラスをまねて、特別の声を出したのです。「カアゥ ワァッ! カワゥ ワァッ!」誰もが、ちびが住んでいる、遠くのさみしい山を思い浮かべました。

 いそべ先生が、どうしてちびがカラスの鳴き真似ができるようになったのか、クラスの子どもたちに話して聞かせると、子どもたちは、長い間ちびにひどい態度をとったことをふりかえり、泣きました。そしてまもなく迎えた卒業式の日、ちびは6年間一度も学校を休まなかったので、クラスでただひとり、皆勤賞をもらったのです!

恩師の思い出から生まれた「いそべ先生」

 クラスのみんなからのけものにされても、毎日遠い道のりを学校に通いつづけたちび。ひとりぼっちでいる時間には、身のまわりのさまざまなものを眺めたり、音に耳をすませたりして、自分の世界を広げていたのです。

 ちびの個性を尊重して、最後には発表の場を与えてくれた担任・いそべ先生は、著者・八島太郎さんのふたりの恩師の思い出を合わせて描かれました。きっと、子どもたちひとりひとりをよく見て、長所を伸ばしてくれるような先生たちだったのでしょう。人と違うことを排除しようとするのではなく、個性として受け止めることの尊さを感じる絵本です。

原書はアメリカで出版され、コールデコット賞次席に!

 『からすたろう』の原書は、1955年にアメリカで出版された“Crow Boy”です。コールデコット賞(アメリカでその年に出版された最高の絵本に贈られる賞)の次席に選ばれるなど、この作品は高い評価を受けました。

 

 
 八島さんは鹿児島県の生まれですが、1939年、太平洋戦争が起こる直前に渡米し、アメリカで絵本作家としての人生を歩み始めました。八島さんは渡米の理由について以下のように語っています。

どういう形でおこるかわからないけど、これから戦争になるのはたしかだった。自分にも召集令状がいつくるか、今日か明日かと待ってたんです。そういうふうになると、空の青さもかつて描いたことのない程美しくみえるんだよ。死にたくないんだよね。

(『月刊 絵本』1977年9月号のインタビューより)

 こうして八島さんは、アメリカで平和運動をしながら終戦を迎え、1955年に最初の絵本“The Village Tree”を出版。その後も絵本を作り続け、『からすたろう』をはじめとする3作品がコールデコット賞次席に選ばれるという偉業をとげるのです。1979年には、“Crow Boy”は『からすたろう』として偕成社から出版されました。

 ほかの作品も多くが日本で出版されています。ぜひお手にとってみてくださいね。

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