雨ふりの日は、外遊びもできないし、ちょっと退屈ですね。『あめかっぱ』(むらかみさおり 作)は、そんなちょっと「つまらない」雨の日を、特別な一日に変えてくれる絵本です!
「どうも、かっぱです」
その日は、朝からずっと雨がふっていました。「ピンポーン」手が離せないお母さんのかわりに、なおちゃんが扉をあけると……そこにいたのは、緑色の生き物! なおちゃんはびっくりして机の下に隠れますが、お母さんは
「きょうは ようじが できて でかけなくちゃいけないから、かっぱさんと おるすばんしててね。きっと すごーく たのしいから、いいこでね」
といって、さっさと出かけてしまいます。
おかあさんが いなくなると、かっぱは テーブルのしたを のぞきこんで、「なおちゃん、きょうは ピクニックびよりですよ」と、いいました。「あめなのに?」なおちゃんが おもわず きくと、「あめだから!」と、かっぱは こたえました。
それをきいて、急にわくわくしてきたなおちゃん。かっぱとの楽しいおでかけのはじまりです。
林の奥でかっぱが買ってくれた、ふきの傘。おやつのきゅうり。雨でみるみる大きくなる池に、船をうかべてたどりついた、高い高い木の上の遊び場。なおちゃんを待っていたのは、雨の日だけしかできない、特別な体験ばかり!
同じように「かっぱとおするばん」する他の子どもたちとともに、なおちゃんはこの雨の日のおでかけを大満喫します。(「きっと すごーく たのしいから」といったお母さんの言葉は、本当でした!)
すみずみまで楽しめる、むらかみさおりさんのデビュー作
雨の日に、おうちにかっぱがきたら……。妖怪のイメージが強いかっぱですが、この絵本に登場するかっぱは、まるでもう一人のお母さんみたいにやさしくて、丁寧で上品。読者も、最初はなおちゃんと一緒にちょっと「ぎょ!」っとしてしまいますが、すぐにこの「いい」かっぱのおだやかな笑顔をみて、安心して過ごせることに気づきます。
著者のむらかみさおりさんは、これが初の作品。雨の日の、肌がひやっとする感じや、林の木々からたちあがる葉の香りまで体感できそうなリアルな画面が、主人公のなおちゃんと一緒に、読者を楽しい遊び場へ誘います。細やかに描かれた絵本の画面には、文章にはないたくさんの発見があり、想像を膨らませて読めるのもうれしいところです。
雨の日が待ち遠しくなる、夢のような一冊です。
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