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今週のおすすめ

赤羽末吉の絵で楽しむ昔話絵本5作

1980年に、日本人として初めて国際アンデルセン賞・画家賞を受賞した赤羽末吉さんは、2020年生誕110周年を迎えます。代表作『スーホの白い馬』をはじめ、数々の昔話絵本を手がけてきた赤羽末吉さんの作品から5作をご紹介します。


これぞ、昔話絵本! ねずみのすもう(神沢利子・文/1983年)

 いわずとしれた昔話の定番「ねずみのすもう」を神沢利子×赤羽末吉という安心感のあるコンビで描いた絵本。「でんかしょ でんかしょ」太っちょねずみと相撲をとるやせっぽっちのねずみを応援するため、老夫婦が大事にとっていたもち米でもちをつき、力をつけさせます。神沢さんによるテンポのよい文章で語られます。

 昔話にふさわしい墨の線で描かれた絵ともに、大胆な色づかい、独特の構図の展開が楽しめます。一場面での、ねずみの小さな世界と、おじいさんおばあさんの世界の描き分け方もみごとです。定番の昔話だけに、さまざまな絵で描かれ、アニメーションにもなっていますが、やはり昔話はこのような絵で味わいたいと思わせる1作です。それにしても、登場するおもちのおいしそうなこと! 

やさしさのある『ゆきむすめ』(今江祥智・文/1981年)

 

 児童文学作家の今江祥智さんが、「赤羽末吉さんという絶妙な描き手と組むとあっては、こちらもひとつ羽ばたいてみなければ—-」と考えた、オリジナルの「ゆきむすめ」の物語。

 このお話では、ゆきむすめが何人も登場します。彼女たちはお嫁にいった男に身元がばれると、たちまち男を凍らせてしまい、村の女たちから反感を買っていました。そのなかで、ひとりの心やさしいゆきむすめがいました。彼女は人里離れたところである男とひっそり暮らしていましたが……。男と女のせつない物語です。

 文章では、ゆきおんなたちは「おそろしさ」のあるものとして描かれますが、赤羽さんの独特のやさしい描き方で、おだやかな心でお話に入り込むことができることでしょう。

鼻がどこまでものびる!奇想天外な『てんぐだいこ』(神沢利子・文/1982年)

 ある日、げんごろうさんは川の土手て小さなたいこをひろいました。それは「鼻高くなれ」とたたけば、鼻が高くなり、「鼻低くなれ」とたたけば低くなるふしぎなたいこ。そこでげんごろうさんは、金持ちのきれいな娘さんの鼻をこっそりたいこをたたいて高くしておき、家中が心配している中で、何食わぬ顔でやってきて鼻を低くしてみせ、たくさんの褒美をもらいます。ところが、調子に乗ったげんごろうさんは思わぬトラブルにまきこまれ……。

 たいこをひろったそばから悪知恵を思いつくとは思えない、ちょっととぼけた顔をしたごく普通の男性のげんごろうさんですが、ちょっとしたきっかけでみるみる「てんぐ」になってしまう様がカラフルに描かれます。

頼光四天王の「鬼退治」を題材に『鬼のうで』(1976年)

  源頼光とその家来の「鬼退治」を題材にした赤羽末吉が文・絵ともに手がけた絵本。闘いの末に鬼のうでを切り取り持ち帰った、家来のひとり渡辺綱、そしてその腕をとりかえそうとあの手この手で襲いかかる鬼。その勝負の行方は? 無駄のない最小限の線と、効果的な色づけで動きのある画面をつくった、デザイン性の高い絵本です。

今昔物語集の一遍の絵本化『鬼ぞろぞろ』(舟崎克彦・文/1978年)

 今昔物語集にある話(巻16・32話)の絵本化。鬼につばをかけられ、姿の消えた男が、人から見えないことをいいことにさまざまな悪事をはたらきますが、やがて試練をむかえたとき、自分の心の醜さを顧みて正しい行いをし、元の姿に戻れる、というお話。悪事をはたらいたものが、最後の最後で一転善の道を選ぶという、『てんぐだいこ』とは対称的な展開です。

 最初に橋のところで男がでくわす、百鬼夜行の場面は、冷気を感じさせるほど、鬼の放つ恐ろしさがみごとに表現された迫力ある画面で、一気に魑魅魍魎のいる平安の世界に引き込まれます。赤羽末吉の画力が遺憾無く発揮された作品。

 

 以上、赤羽末吉の絵本から昔話絵本を5冊とりあげました。題材と真摯に向き合い、1作ごとに表現の考察と挑戦を感じさせる絵本です。どうぞお手に取ってみてください。

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今日の1さつ

「ハンカチ カーチ カチ」の繰り返しが楽しくて心地よい。とても良い絵本だと思います。(2歳・お父さまより)

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