小学校に入ると、注目されるのがこわかったり、何を話そうか迷ってしまったりすることもありますよね。『あのね、わたしのたからものはね』(ユードリイ 作/ミル 絵/川合知子 訳)の主人公も、そんな女の子です。
小学1年生のメアリィ=ジョーのクラスでは、毎朝だれかが自分の宝物について話す時間があります。でも、なかなか手をあげられないメアリィ=ジョーは……?
人前でうまく話せる? 何を話そう?
小学1年生のメアリィ=ジョーは、みんながスピーチで自分の宝物を紹介するなか、なかなか話すことができません。それには理由がありました。
ひとつめの理由は、メアリィ=ジョーが恥ずかしがり屋だから。みんなの前に立って、大きな声で話す……そう考えただけで、胸がどきどきします。
ふたつめの理由は、何を話せばいいかがわからないから。みんなが喜んで聞いてくれるような、すてきな宝物の話をしたいと思うものの、その宝物がうまく見つかりません。
買ってもらった傘を紹介しようか、つかまえたバッタを見せようか……。日々頭をめぐらせるメアリィ=ジョーですが、いつもうまくいかず、とうとうクラスには、話をしていない子はほかにいなくなってしまいました。
ひらめいた! しんけんに向き合ったからこそ見つかった、大切な宝物
こうなったら、だれも話したことのないような、すてきな宝物の話をしたい!と決心したメアリィ=ジョー。ある日、いつもメアリィ=ジョーがみんなの前で話せたかどうか気にかけてくれるお父さんと話していて、いいことを思いつきました!
「ねえ、とうさん、あした ちょっとのあいだでいいから、わたしの学校へ きてもらえない?」
メアリィ=ジョーは、お父さんの話をすることにしたのです。
さて、クラスのみんなは、どんな反応をするのでしょうか?
コルデコット賞受賞作家、ジャニス=メイ=ユードリイの名作
この本の作者、ユードリイは、絵本『木はいいなあ』でコルデコット賞を受賞した女流作家です。『あのね、わたしのたからものはね』では、人前で話すことに緊張する気持ち、でも絶対にすてきな話をしたいと奮闘するひたむきな気持ちなど、子どもの心をこまやかに描いています。同時に、学校の先生やお父さんなど、子どもを見守る大人の姿も、ていねいに表現されています。
入園・入学、進級の季節、前向きな一歩を踏み出したくなる一冊です。